紙パルプを原料にして史上最高耐熱のプラスチックを開発――ポリベンズイミダゾールを生産する新規プロセス 東京大学ら

東京大学大学院農学生命科学研究所の大西康夫教授らの研究チームは2020年10月14日、北陸先端科学技術大学院大学、神戸大学、筑波大学と共同で、超高耐熱性プラスチックをバイオマスから作ることに成功したと発表した。新しいポリマーデザインにより、プラスチック史上最高となる耐熱性を達成したという。

循環型社会の構築には、バイオマス由来のプラスチックの利用が望まれているが、これまでのバイオマス由来プラスチックは耐熱性が低く、用途が限られていた。耐熱性が高いことで知られている芳香族系ポリマーは、原料がすべて石油由来の芳香族化合物のため、天然に存在する芳香族ポリマーのリグニンの利用も検討されているが、耐熱性の高いプラスチックを作るには多くの困難がある。

そこで、「高性能イミダゾール系バイオプラスチックの一貫生産プロセスの開発(平成25年度から平成30年度)」(科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業)に取り組み、バイオマスから超高耐熱性プラスチックを作ることに成功した。研究チームは、高耐熱性のポリベンズイミダゾール(PBI)に着目。効率よくその原料となる芳香族化合物を生産する遺伝子組み換え微生物を創成したという。

また、代表的な非可食バイオマスである紙パルプを効率的に酵素糖化し、高濃度のグルコースを含む糖化液を生産するシステムを開発。化成品を用いて検討した結果、PBIフィルムの作製法を開発した。同時に、耐熱性がPBI原料とアラミド繊維原料の共重合によって大きく向上することを見出し、DABA:ABA=85:15のコポリマーの10%重量減少温度が740℃超となる史上最高耐熱のプラスチックフィルムを作製した。

最終的に、紙パルプ糖化液を使って発酵生産した芳香族化合物から同等の性質を持つPBIフィルムを作製できることも示し、超高耐熱性PBIフィルムの一貫生産プロセスのプロトタイプを紙パルプから構築することに成功した。

開発した超高耐熱性バイオPBIは、強度や軽量性にも優れ、さまざまな用途での利用が見込める。耐熱性が非常に高く、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、錫などのさまざまな軽量金属の融点で分解が起こらないため、これらの軽量金属と溶融複合化できるという。自動車ボディ、建築部材などの社会インフラ、駆動部位周辺具材への応用の他、航空/宇宙機器の部品などへの活用も想定され、脱石油化、低炭素化社会への貢献が期待される。

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