水に浮くほど軽量な熱電変換材料を実現――1層のハニカム構造当たりの熱伝導率を11%低減 東北大学ら

東北大学材料科学高等研究所(AIMR)と東北大学多元物質科学研究所は2020年11月26日、山形大学、北海道大学、名古屋工業大学と共同で、熱電変換材料として知られるマグネシウムシリサイド(Mg2Si)ハニカム多孔体の新規合成法を開発したと発表した。得られたMg2Siハニカムは、水に浮くほど軽く、電気伝導率を保持したまま1層のハニカム構造当たりの熱伝導率を11%低減できるという。

エネルギー効率の改善やCO2の大幅削減を図るため、資源的に豊富な元素で構成される軽量で高効率な熱電変換材料が必要とされている。しかし、主に熱電変換材料として用いられているビスマステルル系の金属間化合物は、希少元素である上、密度が大きく、熱電変換効率が最大となる温度が室温付近であるなど、産業廃熱や自動車などの廃熱を利用するには不向きだった。

一方でMg2Siは、資源が豊富な元素で構成される熱電変換材料であり、軽量で最適温度が300℃程度と産業廃熱に適した性能を持つ。しかし、変換効率が低いという課題があった。そこでAIMRらは、Mg2Siハニカム多孔体の新規合成法を開発した。

研究グループは今回、ステンレスチューブ中にMgと共に、ガラスコートしたポリブタジエン(PB)ハニカム膜を封入し、725℃でアニーリングしてMg蒸気処理し、シリカコートPBハニカムをMg2Siハニカムに形状を保ったまま変換することに成功した。

Mg2Siハニカムの作製方法とシリカコートPBハニカム、Mg2Siハニカムの電子顕微鏡写真

化学分析したところ、アニーリング温度が600~650℃ではシリカが還元され、Siとアモルファスカーボンが主に形成されることのほか、725℃では主にMg2Siが形成されることが分かった。形状観察の結果では、鋳型となるポリマーハニカム膜と同様の多孔構造は、どのアニーリング温度でも維持されていた。

得られたMg2Siハニカムは、無機材料でありながら水や有機溶媒に浮くほど軽く、電気伝導率を保持したまま、多孔構造により6割以上の気孔率を持つため、1層のハニカム構造当たりの熱伝導率を11%低減できることが明らかになったという。

水に浮くMg2Siハニカムの写真

AIMRらは、今後デバイス化を進めることにより、高効率で軽量な熱電変換素子による廃熱からのエネルギー変換を実現させ、低炭素社会の実現へ貢献するとしている。

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