富士経済は2016年9月23日、燃料電池システムの世界市場規模についての調査結果をまとめた報告書「2016年版 燃料電池関連技術・市場の将来展望」を発表した。同社はこのレポートにおいて、2030年度の燃料電池システム世界市場規模が2015年度比約46倍の約4兆9000億円になると予測している。
燃料電池システムの市場規模は、燃料電池車市場の本格化で拡大が加速すると見込まれる。富士経済は燃料電池車市場の拡大を次の図のように予想し、燃料電池車の普及に向けた各国の取り組みについて以下のように説明した。
日本では、トヨタ自動車や本田技研工業といったリーディングカンパニーが、政府や自治体による補助金、購入支援、水素ステーションの設置/運営支援を追い風に、燃料電池車市場の拡大をけん引している。
一方、アメリカでは2014年にカリフォルニア、オレゴン、ニューヨーク、マサチューセッツ、コネチカット、メリーランド、バーモント、ロードアイランドの8州がZEV(Zero Emission Vehicle)規制の普及を目指して「Multi-State ZEV Action Plan」を策定。また、燃料電池車の普及に欠かせない水素ステーションの設置も急がれている。
欧州では、ドイツが2016年中に50箇所の水素ステーションを設置する予定。また、ドイツにおける水素ステーションの整備プロジェクト「H2 Mobility」が、2023年までに400箇所の水素ステーションを設置する目標を掲げている。
他にも、イギリスで2012年に発足した「H2 Mobility UK」が、2015年から2020年までに65箇所、2020年から2025年までに330箇所、2025年から2030年までに1150箇所の水素ステーションを設置する意向を表明。フランス、ベルギー、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンなどの国々も、官民を挙げて水素ステーションの整備を進めている。
アジアでは、韓国の現代自動車が燃料電池車「Tucson Fuel Cell」の普及促進のため、生産拠点である蔚山市の水素ステーションを12箇所にする投資計画を発表。また韓国政府が、2020年までに80箇所の水素ステーションを設置する計画を掲げ、官民挙げての燃料電池車普及に注力している。
富士経済は、燃料電池車市場の本格化が燃料電池システム市場規模拡大の一因になると期待。2015年度に1064億円だった燃料電池システム世界市場が、2030年度に4兆9063億円に拡大すると予測している。