リチウムイオン電池のエネルギー損失を防止する新手法、エネルギー密度を10~30%増大

米コロンビア大学工学部材料科学科の研究者が、リチウムイオン電池のエネルギー密度を10~30%増大させる新しい手法を開発した。リチウムイオン電池を初めて充電するときのエネルギー損失を防止し、電池のサイクル寿命を引き延ばすという。

研究チームのYuan Yang助教授は「リチウムイオン電池が初めて充電されるとき、最初のサイクルで5~20%のエネルギー損失が生じる」と話す。なぜなら、電解液中のリチウムイオンの一部が固相となって陽極に析出し、電池に蓄積できるエネルギーが非可逆的に減少するからだ。

流出するエネルギーの量は、最先端のグラファイト電極においては10%くらいだが、シリコンのような次世代型大容量電極では20~30%に達する可能性がある。この大きな初期損失は電池容量を減少させて、電池としてのエネルギー密度とサイクル寿命を低下させる。

そこで同研究チームは、リチウムを電極に混合させてエネルギーの流出を防止できないかと試みた。しかし、リチウムは酸素や湿気と激しく反応するので、大気中では極めて不安定。そのため、エネルギーの損失を防ぐには、リチウムを含む電極を大気中で安定して製造する新しい手法を開発する必要があった。

Yang助教授は今回、リチウムを含む3層構造の電極を開発した。この電極では、まず高分子ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)の層で空気や湿気からリチウムを保護。次に、このPMMAの外側を炭素またはシリコンのナノ粒子でコーティングした。PMMAは電解液中で溶解するので、リチウムは最終的に炭素またはシリコンと結合して電極になる。

この電極は、最初の充電サイクルでリチウムイオンが電解液から陽極に析出するのを防止する。そのため、グラファイト電極におけるエネルギー損失を8%から0.3%まで低減し、次世代型シリコン電極では13%から−15%まで低減できる。「−15%」とは余剰のリチウムが生まれることになり、次の充電サイクルにおける容量損失を補償してくれる。電池のサイクル寿命向上に貢献するわけだ。

米イェール大学化学科のHailiang Wang助教授は、「この3層構造電極は、大気中でリチウムを含む電極の大量生産を可能にする斬新な手法だ」と語る。Yang助教授のグループは現在、PMMA層の厚さを減少し、電池全体に占める体積の割合を減少することを検討している。

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New Method Increases Energy Density in Lithium Batteries

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