協働ロボットに係わる技術とその進化 [安全安心を追求する協働ロボット] ――デンソーウェーブ 佐藤哲也氏

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株式会社デンソーウェーブ FA・ロボット事業部 技術部 部長 佐藤哲也様

~深刻さを増す産業界の人手不足、注目を集める協働ロボット~

産業界において省人化、省力化が急務となっている今、安全、安心に使えること、誰でも簡単に導入できることをコンセプトとした「協働ロボット」が、様々な業種に導入されるようになりました。

全3回の構成で「協働ロボット開発の最前線」を紹介する今回の連載ですが、第1回の「様々な業種で自動化を実現する協働ロボットとは?」に続き、今回の第2回では「協働ロボットに係わる技術とその進化」についてご紹介いたします。お話は、小型人協働ロボット「COBOTTAⓇ」を開発、販売する株式会社デンソーウェーブ FA・ロボット事業部 技術部 部長 佐藤哲也さんです。(執筆:後藤銀河、撮影:編集部)

始まりは自動車部品工場向けの産業用ロボット

――前回、自動車部品の製造工程の危険な作業や悪環境での作業から社員を解放することを目的に、産業用ロボットが開発されたと伺いました。産業用ロボットから協働ロボットへと、どのようにロボット開発が進歩してきたのか、簡単にご紹介いただけますか?

[佐藤氏]初めに産業用ロボットが登場した頃は、CPUや電子デバイスが普及し始めて、どんどん電子化が進みましたが、まだロボットを作ることに精いっぱいで、安全をどう担保するのかまでは、見えていない時代でした。

それが2000年代に入り、世の中に「安全カテゴリ」という考え方が出てきて、製品の安全に関する要件や考え方が検討され始めました。そして2006年にISO13849-1が改訂され、「パフォーマンスレベル(PL)」という安全の定義が明確になりました。リスクの大きさに応じてハードやソフトに求められる安全性能が定義されたことで、そこから一気に協働ロボットが登場してきました。

「安全カテゴリ」「パフォーマンスレベル」の規定が契機に

――安全の定義が明確になり、開発の方向性も定まったということですね。

[佐藤氏]安全性の基準がなかった当初、従来の産業用ロボットに表皮センサーを貼れば安全なのでは、という見方さえありました。産業用ロボットは、重量のある鉄の塊ですから、例えセンサーを貼って接触を検知したとしても、当たれば大ケガをします。産業用ロボットは、物理的に人と接触しないよう、頑丈な安全柵の中に入れないと、とても安全は担保できません。

パフォーマンスレベルの導入が協働ロボットへの進化の大きなきっかけだという

[佐藤氏]2000年頃にはCPUの処理能力もどんどん上がってきて、ロボットの内部でも軸ごとにトルクを検出しフィードバックして制御する技術が向上し、力をうまくコントロールする技術が確立されました。2010年以降になって、トルクセンサーを使った衝突検知やダイレクトティーチングが可能になり、アルゴリズムの開発が一気に進みました。

――COBOTTAは安全、安心がコンセプトだと伺いましたが、どのような形で開発されてきたのでしょうか?

[佐藤氏]私がCOBOTTAのプロジェクトリーダーを務め、担当してから1年9ヵ月ほどで開発しました。

――1年9ヵ月は、開発期間としては密度が濃そうです。

[佐藤氏]協働ロボットに限った話ではありませんが、こういうものが作りたいという、開発コンセプトがないとダメですね。そこがぶれてしまうと、開発期間はどんどん伸びますし、完成しても売れる商品になりません。エンジニアの想いを入れたものを形にすることが大切で、出来上がってくるものが全然違います。COBOTTAでは、“安全、安心”をどう狙っていくのか、チームの皆と知恵を出して、まずコンセプトを決めました。

アームも関節部も丸みを帯びており、指を挟みこまないようなデザインで本質的に安全を担保している。制御部はベースの上部に組み込まれたコンパクトなデザイン

[佐藤氏]機構ではなく、コンセプト、アイデアの部分です。見た目のデザインや形、動きなどは真似できますが、中をバラしてもなぜこれが安全な人協働ロボットとして成立するのかは、まず分からないでしょう。

安全カテゴリやPLが定義されたとはいえ、実は規格自体に具体的にこうしなさいと書かれている訳ではありません。安全認証を取得するというのは、我々が「こうしたら使う人にとって安全だ」という訴えかけ、安全性の主張をして、それを認めさせるということなのです。アイデアを入れて、こだわりを入れて、知恵を入れて、このロボットは安全ですということを、お客様視点で訴えかけるわけです。今ある最新の技術を入れるだけでなく、安全に対する考え方、メカもハードも含めたコンセプトを考え出すことにとても苦労しました。

――COBOTTAは安全、安心というコンセプトで、差別化に成功したということですね。安全と安心は違うとありましたが、それはどういう意味なのでしょう?

[佐藤氏]例えば、家のドアに鍵がかかっていれば安全だと言えますよね?ですが、子どもが一人で留守番していたらどうでしょうか。安全だとしても不安になるかもしれない。でも、保護者が一緒にいれば安心しますよね。これが安全と安心の違いで、この保護者に相当する部分に、どんな技術を入れていけば良いのか、これに苦しみもがいているわけです。安全性はお金をかければ達成できますが、この安心こそが協働ロボットが訴求すべき一番のポイントだと考えています。

誰でも簡単に使えること

[佐藤氏]安心と同じくらい重要なテーマが、“いかに簡単に使えるか”です。協働ロボットを購入するお客様は、必ずしもロボットのプロフェッショナル、車で言えばF1ドライバーのような人ばかりではありません。免許を持っていなくても簡単に使えるようになっていなければいけない。そこをどう追及するのか、お客様が複雑なプログラムを書かなくても動かせるようにする必要があります。

具体的には、ものをここからここに動かす、という動作を教える場合、例えば操作盤でティーチングしたり、ダイレクトティーチングといって手でアームを動かして教える方法はあります。車の自動運転もそうですが、この動作を如何に簡単に教えるのかが、ロボットに求められています。箱から出してすぐに使えるようにはなってきましたが、まだ誰でも簡単に使えるとは言えませんので、この技術を追求し、ブレイクスルーしたいと思っています。

安全であることに加え、誰でも簡単に使えることも大きなポイントだ

――自動車の自動運転同様に、様々な技術革新が必要だということですね。

[佐藤氏]ハードウェアもソフトウェアも、全ての技術が同時に進歩していかないと、ロボットをしっかりと構成できません。今後CPUの性能もさらに高まっていくでしょうし、リアルタイム画像処理に特化したGPU(Graphics Processing Unit)が登場してAIも進歩しています。協働ロボットでは、従来の産業ロボットの延長にある単純作業の繰り返しから、人間の作業員でしか出来なかった高度な作業も、AIが自分で学習して対応できるようになるでしょう。例えば、自動車のボディにハーネスを這わせるような作業はロボットでは難しかったのですが、今後AIによってロボットが知恵をつければ、ハーネスの配策もできるようになると思います。

<br/ >技術の進歩は早くて、3年程前のロボット展示会に出品したロボットでは、タオルを畳むデモとか、それまでロボットが不得意だった分野を、大型のコンピューターでAIを走らせて実現していました。今でも一般的なロボットは制御装置を外部に備えていますが、COBOTTAはベースの内部にコントローラが入っていて、ACアダプタをつなぐだけで動きます。

――次回は、「協働ロボットの今後と、求められているエンジニアは?」と題して、お話を伺います。


佐藤哲也(株式会社デンソーウェーブ FA・ロボット事業部 技術部 部長)
1992年日本電装に入社し、工機部ロボット技術課にて入社以来一貫してロボットの技術開発に従事。2001年に株式会社デンソーウェーブに出向し、2017年小型人協働ロボット「COBOTTA」を開発。2019年1月より現職。

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株式会社デンソーウェーブ


ライタープロフィール
後藤 銀河
アメショーの銀河(♂)をこよなく愛すライター兼編集者。エンジニアのバックグラウンドを生かし、国内外のニュース記事を中心に誰が読んでもわかりやすい文章を書けるよう、日々奮闘中。


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