イオン液体を一滴加えるだけでペロブスカイト太陽電池を高性能/長寿命化――ナノ粒子薄膜化技術を適用 金沢大学

金沢大学は2021年4月15日、同大学ナノマテリアル研究所の研究グループがペロブスカイト太陽電池の高性能化と長寿命化に成功したと発表した。イオン液体を一滴加えるだけでペロブスカイト太陽電池が高性能化、長寿命化し、6000時間を超えても初期性能の8割を保持し続けるという。

ペロブスカイト太陽電池は、2008年に桐蔭横浜大学の宮坂力教授が開発した有機無機ハイブリッド材料であるペロブスカイト材料をシリコンの代わりに発電材料として用いた太陽電池である。シリコンではできない印刷などの塗布技術により、安価に製造できる。

今回の基盤となる技術は、ペロブスカイトを塗布で製膜する前に、ペロブスカイト前駆体溶液にイオン液体を少量添加するだけで膜が数十nmサイズのナノ粒子膜化する技術で、研究グループが6年前に開発した。研究では、この技術を高性能なトリプルカチオン型ペロブスカイト太陽電池作製に応用している。

研究で導入したイオン液体は常温で液体として存在できる塩で、研究グループは2015年にペロブスカイト太陽電池の塗布成膜の時に、このイオン液体を添加するのみでナノ粒子薄膜が得られることを見出している。

イオン液体を一滴加えるだけでペロブスカイトナノ粒子薄膜が得られる技術

研究では、この技術をペロブスカイトの構成分子であるカチオン種を3つの陽イオンをベースとした高性能なトリプルカチオン型ペロブスカイト太陽電池に応用した。

メチルアンモニウムのみのMAPbI3ペロブスカイト前駆体溶液にイオン液体を添加して塗布製膜すると、MAPbI3ペロブスカイトナノ粒子薄膜が基板上に初期成長する。トリプルカチオン型ペロブスカイトをその上に塗布製膜すると、MAPbI3ペロブスカイトナノ粒子を成長核として、大粒で高結晶性の高品質なグレンインサイズの欠陥が少ないトリプルカチオン型ペロブスカイト膜を得られた。

研究の太陽電池の構造とイオン液体を添加して高品質化したトリプルカチオン型ペロブスカイト膜の表面電子顕微鏡写真

この太陽電池のエネルギー変換効率は19.4%と高く、電流値である短絡電流密度も25.3mAcm-2 と大きな値を示した。これはイオン液体添加により高品質化し、全体的な光捕集効率の向上、キャリア輸送性能の向上に起因するものと考えられる。

最も重要な利点は、暴露試験で湿度30~40%の範囲の通常大気下で性能が6000時間8割保持され、ペロブスカイト太陽電池の欠点であった低寿命を克服したこととなる。これは、膜がイオン液体添加によって高品質化したこと、イオン液体層が外部からの水の侵入を防いだことにより長寿命化したと考えられる。従来の手法で作製したペロブスカイト太陽電池の場合は、2500時間で発電しなくなったという。

研究により今後、ペロブスカイト太陽電池の実用化とさらなる高性能化、低コスト化を目指していく。

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