VOC、環境負荷を低減するシート状の熱硬化性レゾール型フェノール樹脂を開発 住友ベークライト

住友ベークライトは2021年6月10日、シート状の熱硬化性レゾール型フェノール樹脂を開発したと発表した。フェノール樹脂の特徴を維持したまま、使用時のVOC(揮発性有機化合物)や環境負荷を低減する。

フェノール樹脂は耐熱性が高く、200℃以上の高温、長時間使用される用途で長く使用されている。しかしフェノール樹脂の中でも、溶液タイプのレゾール型フェノール樹脂は有機溶媒系では設備の防爆対策やVOCといった作業環境が問題となり、水溶液系のフェノール樹脂は保管や使用時の管理が難しくなる課題があったという。

一般的なレゾール型フェノール樹脂溶液は、そのまま溶媒を乾燥させると粘着質な高粘度液体となり、そのままではシート形状にすることができない。熱硬化性であるため、板上に薄く塗工して乾燥(硬化)させると、一見シート状の薄膜硬化物も得られるが、シート状の未硬化樹脂として取り扱うことができない硬くて脆い薄膜となる。

これに対して同社は、フェノール樹脂の変性技術を生かし、少ない変性量でフェノール樹脂の特徴を強く残しつつ、シート化できるフェノール樹脂を見出した。離型フィルム状にこのフェノール樹脂溶液を塗工して乾燥させると、シート状のフェノール樹脂になるという。

一般的な有機溶媒系の溶液状フェノール樹脂には、有機溶剤が50~70%含まれているが、今回開発したフェノール樹脂シートに含まれるVOC成分は5%以下。溶液状フェノール樹脂と比較して10分の1以下に低減されている。

使用法の一例には、プラスチック部品-金属やプラスチック製品同士の接着剤が挙げられる。フェノール樹脂シートを被着体に貼り付け、別の被着体を押し付けて熱プレス等で加熱硬化することで、高い耐熱性をもつ接着面が得られ、250℃以上の高い耐熱性が要求される部材で有用な接着剤となる。

鉄板同士を接着した場合、溶液状のフェノール樹脂と比較して10%以上高い接着強度を示すことが確認できた。耐熱性を一般的な熱硬化性接着シートと比較すると、エポキシ樹脂系接着シートは250℃の熱処理後に接着強度が30%程度まで低下するが、このフェノール樹脂接着シートは250℃熱処理後も95%以上の接着強度を維持する。

接着以外の使用方法には、含浸用としてプリプレグやFRPのバインダーも想定される。基材にフェノール樹脂シートを重ねて溶融、硬化させ、有機溶剤の使用や設備制限なしにプリプレグを作製できるという。

今後、既存のフェノール樹脂からフェノール樹脂シートへの置き換えによる環境対応化を提案していく。さらに、現在はフェノール樹脂を使用していない用途でも、自動車や航空機関連部材をはじめ、さまざまな産業分野への適用、実績化を目指す。

関連リンク

プレスリリース

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る