細胞の遺伝子をコーディング――ウイルス耐性を備えた人工細菌の開発に成功

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ケンブリッジ大学の研究チームは、遺伝子に組み込んだ指示に従って自然界には存在しない構成要素から人工ポリマーを作る能力を備えた細胞の開発に成功した。生分解性プラスチックや医薬品など新しいポリマーの開発につながる可能性があるもので、研究成果は『Science』誌に2021年6月4付で公開されている。

DNAの情報は、A、G、C、Tの4つのアルファベットで表される塩基で構成されており、コドンと呼ばれる連続した3個1組の塩基セットが特定のアミノ酸をコードする。各コドンにはそれぞれ対応するtRNAが存在し、tRNAの働きにより特定のアミノ酸が付加していくことで、タンパク質は生成される。

4文字を3個ずつ並べた場合の文字の組み合わせは64通りになるが、アミノ酸は20個しかない。そのため、いくつかのコドンは同じアミノ酸をコードしている。またタンパク質の生成を止めるサインとなる終止コドンも3通りある。

研究チームは2019年に、大腸菌の全遺伝子を合成ゲノムに置換したSyn61という合成生物を作製した。その際にゲノムを単純化して、セリンをコードするTCGとTCAを同じくセリンをコードするAGCとAGTに置換した。また、終止コドンのうちTAGをすべてTAAに置き換えた。

今回、この細菌をさらに改良して、TCGとTCAを認識するtRNAを取り除いた。そのため、たとえ遺伝暗号の中にTCGやTCAが存在していても、細胞は読み取ることができない。つまり宿主の細胞の機能を利用して複製するウイルスは、自身のゲノムに含まれているTCAやTCGを読み込ませることができないので、この細菌の中では増殖できないのだ。実際に、この人工細菌にウイルスを感染させたところ耐性を持つことが示された。

タンパク質医薬品やワクチンなど多くの医薬品は、細菌で生産している。ウイルス耐性のある細菌を利用すれば、培養過程におけるウイルスの脅威を防ぐことができる。

また、ゲノムを単純化することで使わなくなったコドンを自然界には存在しない人工アミノ酸に対応させた。これらのコドンを遺伝配列中に再配置することで、人工アミノ酸を含む人工ポリマーを効率的に生成できるようになった。

今回の結果は、人工細菌が再生可能でプログラム可能な工場となり、新しい特性を持つさまざまなポリマーを生産できることを示している。

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