ソニーは2021年9月9日、産業機器向けに、業界最小となる4.86μm角画素で、被写体の変化のみを検出できる積層型イベントベースビジョンセンサー「IMX636」と「IMX637」を商品化すると発表した。IMX636は1/2.5型（対角7.137mm）有効約92万画素、IMX637は1/4.5型（対角3.983mm）有効約33万画素。サンプル出荷は2021年10月の予定だ。高速／高精度なデータ取得により、産業機器の生産性向上につながると期待している。
イベントベースビジョンセンサーは、非同期で各画素の輝度変化を検出し、画素の位置（xy座標）と時間の情報と組み合わせて変化したデータのみを出力する。一般的に利用されているフレームベース方式と比べ、イベントベース方式は低消費電力ながら必要な情報のみをマイクロ秒レベルで高速／低遅延に読み出せて、高時間分解能を持つ出力にも対応できる。
IMX636とIMX637は、ソニーとProphesee（プロフェシー）による協業を通じ、ソニーの培ってきたCMOSイメージセンサーの技術と、Propheseeが保有するイベントベース方式のビジョンセンシング技術を組み合わせて開発した。
画素サイズは、業界最小となる4.86μm角を実現。センサーの画素部と、輝度変化を検出する信号処理回路を組み込んだロジック部を、1画素ごとにCu-Cu（カッパー・カッパー）接続で導通するソニー独自のCu-Cu接続を用いた。対象物の輝度変化を検出した画素のみがデータ出力され、低消費電力ながら高速／低遅延で高時間分解能を持つ輝度変化を検出できるようになった。さらに、画素サイズを4.86μm角としたことでセンサーの小型化／高解像度化を両立。さまざまな環境、状況下での素早い動体検出などに対応する。
Propheseeが開発した不要なイベントデータを除去する複数のフィルター機能を搭載し、さまざまな用途に対応。フィルター機能の使用により、LEDフリッカーなどの特定の周期で発生する認識に必要のないイベントの除去（アンチフリッカー）、対象物である動被写体の輪郭に該当しない可能性の高いイベントの除去（イベントフィルター）、後段のシステムが処理できるイベントレート以下となるようなデータ量の調整（イベントレート制御）なども可能だ。
イベントデータを30fpsの1フレームに相当する時間（約33ミリ秒）積算した画像（イベントフィルターOFF）
イベントデータを30fpsの1フレームに相当する時間（約33ミリ秒）積算した画像（イベントフィルターON。ソフトウェアシミュレーションで左から約92％データ削減）
微小な振動の変化を捉えることによる装置の予知保全につながる異常検知や、溶接／金属切削時に発生する火花の変化を捉えることによる治工具の最適な交換など、フレームベース方式のイメージセンサーでは認識が困難な用途や、人間の経験に頼っていた作業工程など、さまざまな場面で生産性の向上につながるのではないかと見込んでいる。
撮像例1 振動検知（フレームベース画像）
撮像例1 振動検知（イベントベース画像）
