再生可能エネルギーへの移行、2050年までに800万人の雇用を生む

2015年のCOP21で採択された「パリ協定」では、産業革命後の気温上昇を世界平均で2℃以内に抑えることを目標(2℃目標)としている。そのためには、化石燃料の使用を大幅に減らし、低炭素エネルギー源に置き換える必要がある。エネルギーシフトは雇用にも影響を与え、RFF-CMCC欧州経済環境研究所(EIEE)の試算によれば、2050年までに世界中で800万人の雇用を創出するという。分析結果は、2021年7月23日付けの『One Earth』に掲載されている。

RFF-CMCC EIEEとブリティッシュコロンビア大学の研究者らは、主な化石燃料生産国を含む50カ国における11のエネルギー技術と5つの職種に関するデータセットを構築し、統合評価モデルを利用して、我々が2℃目標を達成しようとする場合にエネルギー産業の雇用がどのような影響を受けるかを調査した。これまでの分析方法と違い、OECD諸国だけでなく、インド、ブラジル、中国など、今後エネルギーの生産と需要が増加すると予想される非OECD諸国も含んでいる。

分析によると、現在は約1800万人がエネルギー産業で働いており、その内訳は化石燃料産業が1260万人、再生可能エネルギー産業が460万人、原子力産業が80万人だ。化石燃料産業の中でも石炭や石油、ガスの採掘に関わる雇用が約920万人分だ。

もし2℃目標を達成した場合は、2050年までにさらに800万増となる2600万人分の雇用が創出されるという。その内訳は、84%が再生可能エネルギー産業、11%が化石燃料産業、5%が原子力エネルギー産業としている。脱炭素化に伴い、化石燃料の採掘に関わる雇用が急激に減少する一方、再生可能エネルギーの太陽光または風力発電の製造と設置に関わる雇用が増加すると見込んでいる。

研究チームによれば、現在すべての化石燃料を輸入に頼っている日本は、2℃目標のシナリオの下で低炭素社会に移行し、全体的な雇用はわずかに増加するという。

研究チームは、化石燃料の採掘部門は脱炭素化の影響を受けやすいので、政府は公正な移行政策を実施する必要があると指摘している。今回、雇用の変動に焦点を当てたことで、低炭素社会への移行で発生する機会、課題、トレードオフの理解につながるとしている。

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Meeting well-below 2°C target would increase energy sector jobs globally

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