モデルベース開発向け熱とノイズのシミュレーション技術を開発――車載半導体の動作検証時間を約10分の1に短縮 東芝

東芝デバイス&ストレージは2021年9月21日、モデルベース開発(Model Based Development:MBD)向けに、同社従来技術と比較して車載半導体の動作検証時間を約10分の1に短縮可能なシミュレーション技術を開発したと発表した。

モデルベース開発は、ソフトウェアにより仮想環境上で構築した現実と同様のモデルに対してシミュレーションを行う開発手法だ。ハードウェアの試作前から開発と検証を同時進行できる点が特長で、自動車業界を中心に導入が進んでいる。

モデルベース開発では、機能ごとに分けたブロックを繋いでいくことで全体の機能や性能を検証する。熱やEMIノイズなどの指標を検証するにあたっては、各ブロックでの半導体の動作を考慮した高精度なモデルが求められるほか、実際の機器の動作を詳細に再現すると計算時間が増大するといった点が課題となっていた。

今回同社が開発したシミュレーション技術は、「Accu-ROM」と称する技術を採用した。同技術は、メカ機構のみの動作を検証した後にメカ機構のモデルを簡素化し、その後半導体の動作を計算する仕組みとなっている。動作速度の差から生ずるメカ機構での無駄な計算を削減した。

また、半導体の計算では、検証範囲を熱やEMIノイズなど検証する頻度が多い指標にあらかじめ限定したVHDL-AMSモデル(電気や熱、メカニカルな動作などのアナログ的な挙動と、マイコンなどデジタル的な挙動の双方を表現可能なモデル言語)をSPICEモデル(電子回路シミュレーターSPICE上で、電子部品や回路を表現するためのモデル言語)から自動で生成し、シミュレーションに組み込んだ。SPICEモデルを用いた計算と比較して時間を短縮している。

これらにより、従来技術では32時間51分を要していた車載半導体の熱やEMIノイズのシミュレーションを3時間27分で完了させることに成功したという。冒頭の画像は、今回開発したシミュレーション技術の事例を示したものとなっている。

同社は今後、同技術を用いた車載半導体の開発を促進するほか、同社製品の車載機器への搭載を容易にする開発環境を提供する。また、産業機器や家電といった車載機器向け以外の用途にも同技術を展開する。

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