化学反応をリアルタイムで観察――分子接着剤を使った「ナノカメラ」を開発

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ケンブリッジ大学の研究チームは、2種類のナノ結晶を分子接着剤で組み合わせて、化学反応をリアルタイムで観察できる「ナノカメラ」を作製した。ナノカメラの材料は、混合すると数秒以内に自己組織化する。このプラットフォームは、再生可能エネルギーのための光触媒や太陽光発電の改良など、さまざまな用途に向けた幅広い分子の研究に利用できる可能性がある。研究成果は『Nature Nanotechnology』誌に2021年9月2日付で公開されている。

自然界では、複雑な分子の集合体は自己制御により形成する。しかし、実験室でこれらの過程を模倣するには、複雑な手順、時間、費用が必要だ。

今回研究チームは、ククルビットウリルを分子接着剤として、量子ドットと呼ばれる半導体ナノ粒子と金ナノ粒子からなるハイブリッド材料を作製した。ククルビットウリルは両方のナノ粒子と強い相互作用を示す。金ナノ粒子と分子接着剤のみの混合では、際限なく凝集し沈殿してしまうため、溶液中のナノカメラとして利用できない。しかし量子ドットを加えることで、量子ドットの自己制御効果により、ハイブリッド材料も自らのサイズと形状を制御、制限できた。この構造は数週間にわたり安定しているという。

ハイブリッド材料は、光触媒反応や光による電子移動の追跡をするナノカメラとして利用できる。ハイブリッド材料の半導体部分で光を取り込み、光合成で生じるような電子移動のプロセスを誘発し、金ナノ粒子がセンサーとなり分光法を用いて化学反応をリアルタイムでモニターする。

研究チームは、ナノカメラを用いて、不対電子を持つ分子であるラジカルの生成や、2つのラジカルが可逆的に炭素-炭素結合を形成するσ結合型二量体であるビオロゲンなどラジカル集合体の生成を観察した。ラジカル集合体については、理論上は考えられていたがこれまで直接観察することはできなかった。

研究リーダーであるOren Scherman教授によると、優れた特性を持つ新素材を開発するために異なる化学種を組み合わせてハイブリッド素材を作ることはよくあるが、ハイブリッドナノ構造では、成長が制御できなかったりハイブリッド材料の不安定であったりなど、難しさがあるという。共同研究者のJade McCune博士は、「今回作製したハイブリッド材料の自己制御特性には驚かされた。あるナノ粒子成分を加えることで、別のナノ粒子成分の凝集を制御できる」と述べている。

分子接着剤を利用して結合できる金属や半導体の数を考えると、今回開発したプラットフォームは化学反応のイメージングやセンシングなどへの幅広い可能性が期待できると言えるだろう。

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