唾液だけで診断可能――MITがコロナウイルスを検出するカーボンナノチューブベースセンサーを開発

Credits:Images: courtesy of the researchers

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、カーボンナノチューブを用いて、抗体を使わずに新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を迅速に検出するセンサーを開発した。これまでは難しいとされていた唾液サンプルからも検出でき、約5分間で検査結果が得られる。この手法はSARS-CoV-2だけでなく、将来パンデミックが発生した際の病原体への応用も可能だ。研究成果は『Analytical Chemistry』誌に2021年10月26日付で公開されている。

カーボンナノチューブにレーザー光を照射すると、エネルギーを得て蛍光を発する。研究チームは、この性質を利用したカーボンナノチューブセンサー技術をすでに開発しており、それはカーボンナノチューブと両親媒性ポリマーを結合させることで、特定の標的分子を化学的に認識する仕組みだ。両親媒性ポリマーは疎水領域でカーボンナノチューブと結合し、親水性領域はカーボンナノチューブの周囲にループを形成する。標的分子がループに入り込みカーボンナノチューブと結合すると、カーボンナノチューブが発する蛍光の強度や波長が変化する。

研究チームは、どの両親媒性ポリマーがどのような標的分子と最も相互作用するかを予測するストラテジーをすでに開発していた。SARS-CoV-2を標的するセンサーに使用する両親媒性ポリマーの候補物質は11種類に絞られており、プロジェクト開始からわずか10日後には、SARS-CoV-2のNタンパク質(ヌクレオカプシド)とSタンパク質(スパイクタンパク質)の両方を認識できるセンサーを構築した。論文では1mLのサンプルから2.4pmolのウイルスタンパク質を検出できると報告しているが、論文投稿後のさらなる研究により、現在市販されている迅速検査薬よりも低い検出限界を達成しているという。

従来のSARS-CoV-2検出法は、炭水化物や消化酵素の存在から唾液による新型コロナ診断は難しかった。しかし、この手法では唾液検体からも検出できる。また、抗体を利用しないため、時間のかかる抗体の生成と精製が不要で、輸送中の安定性について心配する必要もない。

今回開発したセンサーは空港や職場などでの利用が期待できる。特定ウイルスに対する検出法を迅速に開発できれば、パンデミックが起こった際により早い段階で経済活動を再開することも可能だ。

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