1℃の熱で87mVを生む装置を開発――新型コロナなどの発熱検知器への利用に期待 テキサスA&M大学

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、世界中で公共の場所での体温チェックは一般的なものになった。テキサスA&M大学の研究者たちは、現在の方法よりも迅速かつ安く、大人数の体温をチェックする技術を研究している。

同大学機械工学科のChoongho Yu教授は学生とともに、体温から発生する熱エネルギーを利用して、装着している人の発熱を検知できる小型の自立型電子機器を開発中だ。

研究チームは、熱-水-電気化学エネルギー変換の新しい原理を用いて、炭素鋼電極の腐食特性から、普段ユーザーが捨てている熱エネルギーを利用して、発熱検出装置に電力を供給する効果的な方法を探っている。

「開発中の発熱検知器は、公共の場で不特定多数の人に低価格で配布して、COVID、SARS、MERS、豚インフルエンザなどにウイルス感染したときによく見られる発熱の早期/即時検知に役立つようになるかもしれません」とYu教授は述べる。

発熱による温度差を利用して出力電圧を得られるので、熱エネルギーを回収する方法として大きな可能性を秘めているという。研究チームは温度変化を可視化するために、エレクトロクロミック発熱検出器を作製し、今回考案した電力供給装置に接続した。

これまでの試験結果で観測された熱エネルギー変換では、1℃当たり87mVという異例の値が得られた。従来の熱電素子では同等の電圧を得るために少なくとも1000個のデバイスを必要としたが、同大学の電力供給装置なら4~8個のデバイスを直列に接続すれば、一般的なウェアラブルデバイスを動作させるのに十分な数ボルトレベルの電圧を供給できる見通しだ。

「われわれのデバイスは、炭素鋼の腐食を利用して電圧と電流を生成しています。このデバイスの寿命は、腐食プロセスの速度に依存しますが、一般的な炭素鋼の腐食速度を考えると、今回のデバイスで利用した量なら10年以上使える可能性があります」とYu教授は説明している。

本研究の成果は、Nature Communications誌に2021年9月6日付で掲載されている。

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