3Dプリンターで曲がるOLEDを作製――自家製ディスプレイも実現可能に

Credit: McAlpine Group, University of Minnesota

ミネソタ大学ツインシティー校の研究チームは、1台の3Dプリンターで電極や発光層をプリントし、柔軟なOLEDディスプレイを作製することに成功した。将来、工場の大規模設備でなくても、家庭用3Dプリンターでディスプレイを自作できるかもしれない。研究結果は、2022年1月7日付けの『Science Advances』に掲載されている。

有機材料を利用して電気を光に変え、映像を表示するOLEDディスプレイは、軽量、薄型、柔軟、高効率、広視野、高コントラストといった点が人気となって、大型のテレビから小型のスマートフォンまで、さまざまなディスプレイに利用されている。

通常のOLEDディスプレイは、クリーンルーム内の大型設備で製造されるが、Michael McAlpine教授率いる研究チームは、デスクトップサイズの3Dプリンターを使ってOLEDディスプレイを作れないかと考えていた。以前にも試みたが、発光層の均一性に苦しんだ。別のチームの場合、スピンコートや熱蒸着も利用しており、3Dプリンターだけで作製したOLEDディスプレイとは言えなかった。

今回、研究チームは、押し出し式と噴霧式の2種類のプリント方式を備えた3Dプリントシステムを構築し、純粋に3Dプリンター製といえる柔軟なOLEDディスプレイを作製した。ディスプレイは6層で構成し、電極、相互接続、絶縁、カプセル化は押し出し式、発光層は噴霧式と方式を切り替えることで、課題としていた発光層の均一性を確保した。

試作品の大きさは1.5×1.5インチ(約38×38mm)、解像度は8×8ピクセルだ。すべてのピクセルが機能し、文字をスクロール表示できることを確認した。研究チームの1人は、予想以上の成果に「その夜は一睡もできなかった」と話している。

PETフィルムの上にプリントされたディスプレイは、シリコーンの一種PDMSで覆われ、柔軟で耐久性も高い。2000回以上の曲げ試験でも、比較的安定した性能を示した。ソフトエレクトロニクスやウェアラブルデバイスへの利用が期待できる。

研究チームは次の課題として、輝度と解像度の改善を挙げている。また、今回使用した3Dプリンターは特別仕様のため、費用は「TESLA モデルS」程度、つまり1000万円以上はかかるようだが、「数年後、小型のポータブルプリンターを使って、家庭内や外出先であらゆる種類のディスプレイをプリントする場面を想像するのは難しくない」と、McAlpine教授は語っている。

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