アルミニウムスクラップを純アルミニウムに再生可能な技術を開発 東北大学

東北大学は2022年4月26日、同大学大学院工学研究科の研究グループが、不純物元素が混在するアルミニウムスクラップを純アルミニウムに再生できる技術を開発したと発表した。再生時に要するエネルギーも、アルミニウム新地金を製造する際の半分以下に抑えている。

アルミニウム(Al)は、従来より世界規模でリサイクルされている。ただし、リサイクルするたびに不純物元素が混入するため、品質が徐々に低下するダウングレードリサイクルとなる。

リサイクルアルミニウムは、自動車用エンジンブロック鋳造品を最終用途とすることが多い。ただし、電気自動車(EV)への移行が進むことでエンジンの需要は減少し、アルミニウムの循環構造が破綻しかねないことが課題となっている。アルミニウム再生時の精製技術が開発されれば、同課題を解決することが可能となる。

同研究グループは今回、アルミニウムスクラップを固体のままで溶融塩中で電解するという手法に着目した。銅や鉛、亜鉛といった粗金属から水溶液中での電解によって高純度金属を得る技術に着想を得ている。

Si(シリコン)を11質量%、Cu(銅)を2質量%、鉄(Fe)を0.8質量%含有したAl合金を、固体のまま陽極として電解する実証実験を行ったところ、陰極において純度99.9%のAlを96%の収率で回収することに成功した。

また、Siは陽極の抜け殻の中に残存するため、Alと高効率で分離可能なことも判明した。回収することで、資源として再利用できる。

アルミニウム合金、陽極泥およびアルミニウム電解析出物の組成

さらに、新技術を用いたAl再生にかかるエネルギー消費は、58~80MJ·(kg-Al)-1 となった。現行の電解製錬法であるホール=エルー法を用いた新地金の製造では、エネルギー消費が約162MJ·(kg-Al)-1となっており、今回の手法では半分以下となっている。

なお、同研究グループは、全てのAlスクラップを同手法で精製する必要はないとしている。経済的合理性や省エネルギーの観点から、展伸材に再利用可能な最低限の量を確保するのが望ましいとした。

同研究グループは今後、日本学術振興会やNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援を求めるほか、同大学大学院環境科学研究科の研究グループや豊栄商会と共同で実用化に向けた研究を進める。

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