廃材を燃料に――エタノールを製造するカーボンニュートラルなプロセスを開発

Image: Maria Schießl / TUM

世界的な気候変動を抑制するためには、CO2の大幅な削減が必要だとされている。トウモロコシなどのデンプン質原料や木材、ワラなどリグノセルロース系バイオマスの糖分を発酵させて製造するエタノールは、カーボンニュートラルな燃料として確立している。ドイツのミュンヘン工科大学(TUM)とフィンランドのラッペーンランタ・ラハティ工科大学(LUT)の研究チームは、経済性と技術的効率性を兼ね備えたエタノール製造の新プロセスを開発した。

開発したプロセスでは、林業分野で発生する廃材と水素を利用する。プロセスは複数のサブプロセスで構成されており、酢酸を水素化してエタノールを生産する最終プロセス以外のサブプロセスは、すでに確立された技術だ。そのため商業利用するための技術的ハードルが低いと言える。この生産プロセスはエタノールに対して高い選択性を持っており、副生成物の生成が少なく炭素効率は90%を超えている。

研究チームは、このプロセスの経済性についても評価した。経済性の評価は、原料とエネルギーに関する仮定に基づいて計算したところ、エタノール生産の最低コストは、年間42キロトンを生産した場合の1リットルあたり0.65ユーロだった。その際のバイオマスコストは1メガワット時あたり20ユーロ、電力コストは1メガワット時あたり45ユーロだ。ただしこのプロセスによるエタノール生産は電力コストの影響を強く受けるため、今回の評価したモデルケースではエタノール1リットルあたり0.53〜0.67ユーロの範囲で変動すると計算された。このコストは従来のリグノセルロース系エタノール生産と競合できる価格だ。

収益性が高い理由の一つは、ワラや木材を原料とする従来の発酵ベースのバイオエタノールプロセスと比べ、エタノールの収量がはるかに多いことが挙げられる。従来法では乾燥したバイオマス1トンあたり200〜300リットルのエタノールしか生産できないが、今回のプロセスでは1350〜1410リットルの生産が可能だ。

また、このプロセスを用いれば、生産工程を2カ所に分割することも可能だ。1つ目の工場はカナダやフィンランドなどバイオマスが豊富で廃材が入手しやすい地域に設置して酢酸を生成し、その後電力や燃料の需要が高い地域に設置した2つ目の工場で水素化してエタノールを完成させる。水素は水の電気分解により製造するが、電気分解の動力源にグリーンエネルギーを使用すれば化石燃料と比較して75%の温室効果ガス削減が期待できるという。

研究チームは、今回のプロセスシミュレーションにより技術的効率性、経済性において十分な競争力があることを示した。しかし、商業化するためにはさらなる技術的な成熟が必要だと考えており、触媒開発、反応器設計、バイロットシステムの構築と運用などを視野に入れている。

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