熱電3物性を単一試料で同時に測定できる評価装置を開発――熱電変換材料の性能評価を迅速化 名大ら

名古屋大学は2022年5月30日、同大学とオザワ科学、産業技術総合研究所 中部センターの共同研究チームが、電気抵抗率、ゼーベック係数、熱拡散率と3つの熱電物性を単一試料で同時に測定できる評価装置を開発したと発表した。熱電変換材料の性能評価が迅速化することで、熱電変換技術の高度化に寄与することが期待される。

不要な熱を電気に変換できる熱電変換技術は、化石燃料を用いないクリーンな発電方法として近年注目されている。熱電変換材料の性能を評価するには、電気抵抗率、ゼーベック係数および熱拡散率を高精度で測定する必要があるが、単一の装置ではこれまで3物性を計測できなかった。

また、測定原理の制約上、電気抵抗率とゼーベック係数は面内方向、熱拡散率は厚さ方向しか測定できず、物性により測定方向が異なる点も課題となっていた。

今回の研究では、接触式マルチセンシングプローブ(センサー)および計測手法を新たに構築した。単一の装置および試料を用いることで、室温付近から900℃までの温度帯域の熱電3物性を容易な操作で測定できる。また、測定方向と熱の伝搬方向が同じ面内方向となるため、同一環境下で熱電3物性を測定することが可能となった。

今回開発した接触式マルチセンシングプローブは、等間隔に配置した4本の熱電対プローブで構成される。線径や断熱方法、接触点形状を最適化し、信号強度の安定性や測定精度を高めた。

端部にヒーターを組み込んだ試料支持台に薄板状の試料を置き、接触式マルチセンシングプローブを上面から接触させることで測定可能となる。

電気抵抗率は直流4探針法、ゼーベック係数は定常法、熱拡散率は周期加熱法により測定する。今回採用した周期加熱法は、周期的にヒーターを加熱した際に試料に伝わる熱の応答(位相差および振幅)をプローブ2点で計測し、加熱周波数の変化に伴った熱応答の変化から熱拡散率を算出するものとなっている。この手法により、広い範囲の温度帯域で測定可能となった。

装置は、加熱炉、制御部筐体パネル、測定用電極および電極保持機構部、データ処理装置、各種ガス雰囲気機構部、冷却水循環装置、真空排気装置で構成される。本体サイズは、110×48×116.5cmで、試料は長さ13〜25mm、幅約5mm、厚さ1mm以下の薄板状直方体となっている。

今回開発した熱電特性評価装置「OZMA-1」

同装置は、名古屋大大学院工学研究科が熱拡散率計測における周期加熱理論および測定/解析条件に関する学術的支援を、産業技術総合研究所 極限機能材料研究部門が高温環境計測の技術を提供し、オザワ科学が製品化した。経済産業省 戦略的基盤技術高度化支援事業の補助を受けている。

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