3Dプリンターでサンゴ礁を復元――複雑な形状や生物多様性に対応できる手法を開発

さまざまな海洋生物のすみかとして、生態系の中で重要な役割を担うサンゴ礁は、地球温暖化や沿岸地域の都市化のため、急激に減少している。イスラエルのバル=イラン大学を中心とする研究チームは、サンゴ礁の構造を把握し、複雑な形状を再現できる3Dプリント技術を開発した。研究結果は、2022年3月23日付けで『Science of The Total Environment』に公開されている。

研究チームによれば、サンゴ礁の保護には2つの要件があるという。1つ目の要件は、世界中のサンゴ礁を守るために、大規模な復元を容易にできる革新的なソリューションであること。2つ目は、サンゴ、魚、無脊椎動物といった、天然のサンゴ礁の再生を支える海洋生物を引き付けられるよう、自然の複雑性をサイズとデザインの両方で再現することだ。

ところが、既存の人工構造物は、サンゴの生息環境の3次元的な複雑性を再現することが難しく、製造と設計の観点から広範囲への拡大も難しい場合がある。研究チームは、サンゴ礁の生態系から収集した実際のデータを活用して、拡張性を備え、自然を真似た人工構造を製造するための新しい3Dプリント技術を開発した。

研究チームはまず、サンゴ礁の水中写真データから、非常に正確な3Dモデルを作成した。サンゴ礁の複雑な形状と、その形がサンゴ礁に住む種の多様性を促進する仕組みを算出するため、何千枚もの画像を撮影している。次に、サンゴ礁の生物に関する正確なデータを得るために環境DNAを採取し、他のパラメータと合わせて、サンゴ礁のパラメトリックモデルを作成した。

最終的に研究チームがプリントした3Dサンゴ礁は、セラミックベースで多孔質なため、サンゴ礁の復元と形成の点で非常に理想的だという。「天然素材を利用した3Dプリント技術のおかげで、非常に複雑で多様性のあるユニットの製造が簡単になった。それは通常の金型製造では不可能だったことだ」と、研究に参加したテクニオン・イスラエル工科大学のEzri Tarazi教授は語る。

この手法は、各サンゴ礁の環境に正確に合った設計を可能にし、複雑な形状やしわといった、天然のサンゴ礁が持つ生き生きとしたディテールを個別に設定可能で、サステナブルな製造工程に組み込めるツールを提供する。

研究チームは既に、3Dプリント製サンゴ礁のいくつかをイスラエル南部のエイラート湾に設置している。世界中のサンゴ礁とその生態系の修復に向け、その結果が期待される。

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