一種類の分子のみで白色蛍光を発する新有機材料を発見――有機ELディスプレイなどへの応用に期待 龍谷大学

龍谷大学は2022年8月10日、同大学先端理工学部の内田欣吾研究室が、ある芳香族化合物が容易に結晶化して白色蛍光を発することを見出したと発表した。この白色蛍光は、複数の発光材料を組み合わせることなく、きわめて純度の高い白色が得られる新しい有機材料となる。

一般的にテレビや発光ダイオードの照明では、白色光が非常に重要になる。この白色光は、赤、緑、青の3種あるいは青と黄の2種の光を発する有機材料同士の組み合わせや無機材料同士の組み合わせで作られるが、有機蛍光分子はそれらの材料の一つとなる。

近年、一つの材料で白色の発光色をもつ蛍光材料の研究が注目される中、同研究室では、フォトクロミック化合物であるジアリールエテンを長年研究してきた。今回、その誘導体の酸化閉環して作成した多環芳香族化合物1arの結晶が、青と黄の発光現象を分子内で同時に行い、白色の蛍光を発することがわかった。

有機溶媒に溶かした1arをインクのように使って文字を書き、溶媒が蒸発すると文字が白く発光することから、この結晶が極めて容易に結晶構造を取り易いことが明らかになった。また、この白色光は、青と黄の蛍光の混じりだった。

蛍光発光スペクトルの観察では、青と黄のスペクトルを観測。これらの蛍光寿命も異なっていた。国際照明委員会のCIE標準表色系である(CIE)1931の座標値は0.31、0.30で、純白の値である1/3、1/3に極めて近く、純度の高い白だった。蛍光量子収率は0.12となり、実用レベルと言われる0.1を超えている。

結晶のX線構造解析では、1arには2種類の回転異性体(外側のフェニル基と中央の多環芳香環の間の回転角が異なる)があり、へリンボーン状にそれらが積み重なっていた。便宜上、回転異性体2種類を青と黄で表した結晶構造にすると、青色分子間の重なりは少なく、分子間の距離も離れている。単分子的な青色蛍光を発するが、黄色分子間では重なり部分も大きく分子間距離も小さいため、2分子的なエキシマー発光を示し、これが合わさり白色の発光を示す。

ヘリンボーン(英herringbone)は模様の一種(開きにした魚の骨に似る形状からニシン(herring)の骨(bone)という意味を持つ)

研究の成果は今後、一種類のみの発光材料で構成された新しい有機EL等の発光素子用の基本的な材料の一つとして期待される。

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