矢野経済研究所は2022年8月17日、国内のAGV/AMR(搬送ロボット)市場を調査し、タイプ別動向、参入企業動向、将来展望を発表した。2021年の国内市場規模は2年連続で台数、金額ともに縮小したが、2022年度以降は、台数、金額ともに拡大を見込んでいる。
AGV/AMRのメーカー出荷ベースの市場規模は、2020年度が前年度比6.7%減の7055台、同14.2%減となる161億5000万円。2021年度は、同9.3%減の6400台、同1.7%減となる158億7000万円となっており、台数、金額ともに2年連続で前年度を下回っている。
市場全体として減少となった2020年度は、新製品投入などによる押し上げ効果があったが、新型コロナウイルス感染拡大による経済活動等の先行き不透明感から、ユーザー企業側で設備投資を一時凍結するケースが目立った。2021年度は、長期化するコロナ禍の影響に加え、製品の出荷が2020年後半からの半導体不足で大幅に制限され、前年度に続いてマイナス成長となった。
2020年後半から続く半導体不足は、メーカーによって多少の差があるものの、影響が出ている。障害物の検知などに使われるLiDARのほか、モータ、バッテリー、コネクタなどの不足が目立つ。部品不足の影響は、少なくとも2023年夏頃まで続くと予想。ユーザー企業への納期もこの影響で長期化しており、概ね半年程度に延びるケースが散見される。
メーカー各社では、こうしたサプライチェーンの混乱にさまざまな対応を取っており、早期受注の獲得で部品を先行確保、部品調達を部品の供給元の切り替え/代替で柔軟化といった対応策が特に多くなっている。このほか、部品の調達性(部品確保が容易にできるか)を織り込んだ設計変更、サポート面での満足度向上に資する改良に取り組むメーカーもみられる。
2022年度のメーカー出荷ベースでの市場規模は、前年度比20.3%増の7700台、同25.2%増となる198億7000万円を見込んでいる。半導体不足の影響は依然として続くが、プラス要因としてメーカー各社が前年度のうちに供給体制を改善、強化しており、3年ぶりに増加する見通しだ。
2023年度以降も、プラス材料として足元の人手不足感と設備投資需要の高まりが挙げられる。2025年度には、出荷数量9950台、出荷金額274億9000万円まで成長すると予測。しかし、ユーザー企業のコスト意識が原材料価格の高騰でより高まっているほか、相次ぐ新規参入、新製品投入で、今後、市場が飽和状態に近づくことも想定しており、製品同士の競争の激化が懸念材料となりそうだ。
なお、本調査におけるAGV/AMR市場とは、無軌道型で、走行時に誘導体(磁気棒、磁気テープ、光学テープなど)が必要な無人搬送車であるAGV(Automated Guided Vehicle)、誘導体が不要で稼働領域内の環境地図情報と走行時にセンサーで読み取った外部環境の情報を基に、車両の自己位置を推定しながら走行する無人搬送車であるAMR(Autonomous Mobile Robot:搬送ロボット)を対象とし、メーカー出荷台数と出荷金額から算出した。