電流で減塩食品の塩味を約1.5倍に増強するスプーンとお椀を開発 明治大学、キリン

明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科 宮下芳明研究室は2022年9月7日、キリンホールディングスと共同で、減塩食品の塩味を約1.5倍に増強する独自の電流波形を開発したと発表した。この技術を搭載したスプーン、お椀型の「エレキソルト」デバイスの2023年発売を目指す。

日本人の1日当たりの食塩摂取量は、WHO(世界保健機関)が掲げる食塩摂取基準と比べ、20歳以上の男性10.9g、女性9.3gと非常に多い。しかし、キリンの首都圏在住者を対象としたアンケートでは、塩分を控えた食事(減塩食)を行っている/行う意思のある人の約63%が減塩食に課題を感じ、そのうち約8割が味に対する不満を抱えていることがわかった。

そこで2019年より、人体に影響しないごく微弱な電流を用いて疑似的に食品の味の感じ方を変化させる「電気味覚」の技術の活用について共同研究を実施。減塩食の味わいを増強させる独自の電流波形を開発した。減塩をしている/していた経験者を対象にした臨床試験では、世界で初めて、減塩食を食べたときに感じる塩味が約1.5倍程度に増強することを確認した。

独自開発の電流波形を用いた際の塩味増強効果(対象者31名の試験結果)

「エレキソルト」デバイス使用時の電流の流れ方

また、キリンは、ラーメンや汁物を食べるのに適した電気味覚技術を搭載した「エレキソルト -スプーン-」と「エレキソルト -椀-」を開発。どちらも、宮下芳明研究室とキリンが開発し、箸型デバイスとして発表した電気刺激波形の技術を用いている。

エレキソルト -スプーン-は、スプーンの柄にあるスイッチで電源を入れ、電流の強度を4段階で選択できる。強度の選択後は、微弱な電流がスプーン先端から食品に流れて効果を発揮する。通常のスプーンと同じように使用でき、ラーメンのレンゲ代わり、具沢山のスープやカレーなどに使用できる。

エレキソルト -椀-も、お椀の側面にあるスイッチで電源を入れ、電流の強度を4段階で選択できる。お椀の底部を手で持つと、微弱な電流がお椀内部に流れて効果を発揮する。通常のお椀と同じように使用でき、お味噌汁やお吸い物を飲んだり、ラーメンやうどんの取り分け用の器として使用できる。

また、エレキソルトデバイスを用いた実証実験を2022年9月から開始。ノルト、オレンジページと共同で、おいしい減塩食を開発してセットで提供し、デバイスを用いて満足度を評価する実証実験を開始する。

エレキソルトデバイスは、実証実験で有用性を検証後、2023年に日本国内での発売を目指す。また、健康的な食を提供している企業とのコラボを推進し、楽しく、おいしく、健康的な食習慣を実現できるサービスを目指す。

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プレスリリース
電気刺激によって塩味を1.5倍増強させることに成功――箸型デバイスを開発 明大とキリン

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