シアノバクテリアが二酸化炭素を固定する仕組みの可視化に成功

Canadian Light Source/YouTube

カナダのサイモン・フレーザー大学の研究チームは、サスカチュワン大学にあるシンクロトロン光源施設「カナダ放射光施設(CLS)」の協力のもと、シアノバクテリア(藍藻)がCO2を固定化する際の複雑な分子構造の可視化に成功した。研究の詳細は『Nature Chemical Biology』誌に2022年6月16日付で公開されている。シアノバクテリアのCO2固定化システムを産業プロセスに組み込むことで、CO2排出量の削減に貢献できる可能性がある。

シアノバクテリアは光合成を行う水生の単細胞生物で、大気からCO2を直接取り込み、有機物に変換することができる。しかも、シアノバクテリアのCO2固定化効率は、植物の2倍であり、そのCO2固定化技術に関する知見は、より優れたCO2回収技術の開発に有用と考えられている。

CO2は親電子性物質のため、タンパク質のリジン残基のアミノ基をカルボキシル化することで、タンパク質の生化学的機能を調節できる。しかし、CO2によりカルボキシル化されたリジン残基は自然分解してCO2を遊離してしまうため、この修飾に関する研究は難しかった。

そこで、研究チームはCO2によりカルボキシル化されたリジン残基を安定して模倣する戦略により、タンパク質中のCO2カルボキシル化リジンを定量的に同定する方法を見出した。この技術を用いて、CO2応答性シアノバクテリア「Synechocystis sp.」のリジンを探索したところ、代謝シグナル伝達タンパク質PIIのエフェクター結合部位にCO2カルボキシル化されたリジンを1つ発見した。このリジンはカルボキシル化すると調節エフェクターリガンドであるATPとの親和性が著しく低下することが示され、CO2を介した負の分子制御機構の存在が明らかとなった。

詳細の分子構造の観察は、CLSのビームラインCMCFを利用している。論文の筆頭著者であるサイモン・フレーザー大学のKing教授は、「高分解能の詳細な分子構造の解析を必要とした今回の研究成果は、CLSの存在なしには不可能だっただろう」と述べている。

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