高速充電可能で高エネルギー密度のリチウムイオン電池用カソードを製造する付加製造技術を開発

Image by Jianchao Ye/LLNL.

米ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)は、次世代リチウム電池製造技術や固体電解質材料の開発に取り組んでいるAmpceraと提携し、3D構造のカソード製造用に、溶剤が不要なレーザー粉末床溶融結合(L-PBF)付加製造技術を開発している。このプロジェクトは、米国エネルギー省(DOE)先進製造業室が資金面で支援する30件のプロジェクトの1つに選定され、2022年6月16日に150万ドル(約2億1500万円)の資金提供を受けた。

DOEは、アメリカの産業界の脱炭素化、クリーンエネルギー製造技術の進歩、およびアメリカの経済競争力の強化を促進するプロジェクト30件に対して、総額5790万ドル(約83億5700万円)を資金提供した。選定されたプロジェクトは、よりクリーンで効率的な製造を可能にし、クリーンエネルギー技術のための次世代製造プロセスを生み出す革新的手法に焦点を当てるものだ。

選定プロジェクトは製造プロセス革新、先端材料製造、エネルギーシステムの3領域に分類されており、LLNLのプロジェクト「Dry Laser Powder-Bed Fusion for Structured Cathode Manufacturing(構造化カソード製造用乾式レーザー粉末床溶融結合)」はエネルギーシステム領域で選定された。この領域で選ばれたプロジェクトは、安全性を高め、コストを削減し、市場投入までの時間を短縮するリチウムイオン電池の革新的な製造プロセス開発を目指す。

次世代のリチウムイオン電池では、より高いエネルギー密度と出力密度を低コストで実現することが求められているが、有機溶剤などを使用したスラリー作製と基材コーティングを基礎とする現在のバッテリー製造技術では、重要な評価指標のさらなる向上に苦労している。それに比べ、溶剤を使用しないレーザー粉末床溶融結合は、高出力、低コストのリチウムイオン電池用電極を作り出す手法として有望だ。

L-PBFは、もともと金属部品の3Dプリント用に開発されたものだ。LLNLのプロジェクトでは、この付加製造技術を用いて、カソード粉末混合物をアルミニウム集電体に熱結合させて独自の3D構造を生成し、より高速な充電とより高いエネルギー密度の電池を作り出すことを計画している。

プロジェクトのメンバーによると、環境に優しいプロセスにより、高容量で厚い3Dカソード構造を製造でき、リチウムイオン電池急速充電の目標である15分以内に80%の充電到達を可能にするという。また、溶剤を使用しない超高速レーザー加工は、生産スループットを高め、エネルギー消費量やコストを削減し、電池の出力密度やエネルギー密度を向上させる可能性が高く、電池の大規模生産を可能にする。

Ampceraは、高性能の固体電解質および電極材料における技術に強く、L-PBF加工用に、高度に設計された最先端のカソード粉末をLLNLに提供する予定だ。LLNLとAmpceraは緊密に連携して電池セルを製造し、実際の性能を評価するとしている。

また、3D構造のカソードを開発した後、この技術をアノード設計に拡大し、さらに高いエネルギー密度と出力密度を持つ全固体リチウム金属電池への応用を模索することも考えているという。

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