MIT、データサイエンスを駆使して新たな形状記憶セラミックを開発

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データサイエンスをベースとした最先端ツールを駆使して、高温で安定した形状記憶効果を示すセラミック材料が開発された。/Image: Edward Pang

MITの研究チームが、高温で安定した形状記憶効果を示すセラミック材料の可能性を明らかにした。ジルコニア系セラミックにおいて、可逆的なマルテンサイト変態による変態ひずみが約10%と大きく、変態ヒステリシスの温度幅が15℃と小さくなるように、コンピューター熱力学、相変態物理や結晶解析、マシンラーニングなどの最先端ツールを駆使して合金成分を最適化したものだ。これまでの金属系形状記憶材料では対応できなかった、高温条件や高腐食性環境での応用に道をひらくものと期待される。研究成果が、2022年10月5日に『Nature』誌に報告されている。

Ni-Ti合金を代表とする金属系形状記憶材料は、可逆的なマルテンサイト変態を利用し、低温で変形した後、高温に加熱することにより初期形状を回復する形状記憶効果を有する。油圧または空圧シリンダーに代わり、軽量小型のアクチュエータが必要となる分野、例えば医学分野における内視鏡やカテーテル、工業分野における安全弁やパイプ継手などで用いられている。

近年、可逆的なマルテンサイト変態を、セラミックにおいても利用するアプローチが検討されている。ジルコニアは可逆的なマルテンサイト変態を示し、その変態ひずみも10%レベルを示すことが知られている。マルテンサイト変態の前後で可逆的に形状を回復して、外部に対して仕事をする形状記憶効果が期待されてきたが、セラミックは本質的に脆性材料であるとともに、変態ヒステリシスの温度幅が大きく形状回復サイクル過程で容易に結晶欠陥を生成し、数回のサイクルで損傷してしまうという問題がある。

研究チームは、相変態や結晶解析など基礎物理学だけでなく、コンピューター熱力学、マシンラーニングなどデータサイエンスをベースとした最先端ツールを駆使して、実験データが存在しない複雑な多成分系におけるマルテンサイト変態挙動と化学成分の関係を系統的に解析し、安定した形状記憶効果を示すセラミック系合金成分の探索にチャレンジした。

その結果、ZrO2-TiO2-AlO1.5などのジルコニア系セラミックにおいて、10%レベルの変態ひずみを維持しつつ、変態ヒステリシス温度幅を金属系形状記憶材料と同程度の15℃に低減することに成功した。変態ヒステリシス温度幅は、従来のジルコニア合金の約10分の1であり、報告されている最高データに比べても5分の1の狭さに制御されている。このことから、形状記憶サイクルにおける結晶欠陥生成や材料損傷の問題を克服し、形状記憶セラミックとして多くの繰り返しサイクルにわたって高再現性と高信頼性を確保できると考えられる。

セラミック材料は、金属を超える高温条件や高腐食性環境に耐える特性があり、開発されたジルコニア系形状記憶材料は、ジェットエンジンや資源採掘孔などへの応用の可能性がある。ジェットエンジン内部では、高温ガスの気流を調整するアクチュエータが必要であり、研究チームは形状記憶セラミックによる制御が可能と期待している。

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