静電アクチュエーターの出力を1000倍にできる、有機強誘電材料を開発 東工大とENEOS

東京工業大学は2022年11月17日、ENEOSと共同で、静電アクチュエーターの出力を従来比で1000倍にできる有機強誘電材料を開発したと発表した。静電アクチュエーターは、静電気で発生するエネルギーを動力に変換して物体を動かす装置で、さまざまな機器への応用が期待されている。

静電アクチュエーターは構造が簡単で軽量という特長があるが、大きな出力を得るには10kV程度の高電圧が必要になるなどの制約があり、使途が限定されていた。

研究グループは、静電アクチュエーターの発生力が電極と誘電体間に蓄積される電荷量で決まることに着目。電荷量を増やすために強誘電体の特徴である大きな自発分極の利用を試み、媒体には、近年発見された有機強誘電体の一種である強誘電ネマチック液晶を利用した。その結果、新たな静電アクチュエーターは従来に比べて出力が1000倍になり、駆動電圧は数10Vまで低減した。

また、強誘電材料特有の自発分極によって出力が印加電圧にほぼ比例するため、印加電圧の2乗に比例する従来の静電アクチュエーターと比べて、デバイス制御性の改善も期待できることを確認した。

高電圧が必要な従来の静電アクチュエーターは、感電する危険があることから人体に装着するような機器には利用できなかった。しかし、今回開発した有機強誘電材料を媒体に用いれば、駆動電圧が大幅に低減するため、人の歩行補助や重量物を持ち上げる際の負荷軽減などに使用されるソフトアクチュエーターへの応用が期待される。さらに、構造が簡単でレアメタルを必要としない静電アクチュエーターの大幅な高出力化が可能になれば、電気自動車や産業機械などに使用されているモーターなど電磁アクチュエーターの代替品となる可能性もある。

今回の研究成果は2022年11月11日付の「Advanced Physics Research」にオンライン掲載された。

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