未解決事件ゾディアックの暗号文「Z340」の解読過程を、暗号学者らが公開

アメリカの未解決事件の中で、1968年から1969年に発生した連続殺人事件の犯人ゾディアック・キラー(Zodiac Killer)は、少なくとも5人を殺害した。犯人は事件の中で、自身の犯行に関する手紙と暗号文のメッセージを4通、地方紙に送った。

最初の暗号文「Z408」は1週間で解読されたが、2番目の「Z340」は長年にわたり未解読になっていた。Z340は通常の文字、逆文字、図形、その他の記号が混在し、それらが格子状に配置されていた。これはZ408と似ていたため、当初は早期解読が期待されていたが、Z408には存在しないシンボルが含まれており、解読を困難にしていた。

しかし、事件から51年後の2020年12月、3人の専門家が暗号解読ソフトウェアを使用して、Z340の解読に成功した。その後3人は、暗号解読に至った過程の詳細をホワイトペーパーとして執筆し、2024年3月27日付けでリポジトリサイト「arXiv」に掲載された。

解読に携わった専門家は、ソフトウェア開発者のDavid Oranchak氏、数学博士のSam Blake氏、倉庫オペレーターのJarl Van Eycke氏の3人だ。

Eycke氏は、暗号解読ソフトウェア「ZKDecrypto」でZ340の仮説を探索したが、これが結果として新たな暗号解読ソフトウェア「AZdecrypt」の開発につながったと説明している。

AZdecryptの暗号解析能力によって、Z340が平文の文字を並べ替える「転置式暗号」であり、同音異字置換であるという推測のもと、置換と転置の組み合わせを使って解読を進めた。

そして2020年12月、Blake氏とOranchak氏は、65万5088通りの転置バリエーションからなるバッチ処理をAZdecryptで実行した。その中で、Z340を構成する元の20行を4つのセクションに分割した転置のバリエーションが、いくつかの有効な解につながることを突き止めた。

さらにOranchak氏が、候補の平文に既知のテキストや疑わしいテキストを挿入して、AZdecryptの「クリビング機能」を使用した結果、「私はガス室を恐れていない」、「なぜなら私をすぐにでも楽園へと送ってくれるからだ」といった文章が現れた。しかも、「楽園」が「paradice」と誤ってつづられていた。

この結果を受けて、FBIは2020年12月に、Z340の暗号文を3人の民間人のチームが解読したことを伝える声明を発表した。

ホワイトペーパーの結びの章で著者らは、「もし、暗号文の部分的な解読の成果がなければ、Z340は未解決のままだったかもしれない」として、過去の解読者らの努力に敬意を表するとともに、事件の犠牲者とその家族、子孫への祈りで締めくくっている。

関連情報

The Solution of the Zodiac Killer’s 340-Character Cipher
ゾディアック事件の犯人による「340暗号文」を民間人が解読――51年間、謎に包まれていたメッセージとは?

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