電気自動車(EV)とは?ハイブリッド・燃料電池自動車との違いやメリット・デメリットについて解説

電気自動車(EV)とは?

EVとは、Electric Vehicleの頭文字をとった用語で、電動機(モーター)で走行する乗り物全般を意味します。日本語では電気自動車を指す場合が多く、ランニングコストの安さや、排気ガスを排出しない環境に優しい車として注目を集めています。EVはバッテリーとモーターを搭載し、バッテリーにためた電気を利用してモーターを駆動させ、車を走らせる仕組みとなっています。

ガソリン車との違いとは

ガソリン車は、エンジン内でガソリンを燃やすことで得られるエネルギーを利用して、車を動かします。そのため、大気汚染物質の窒素酸化物(NOx)や二酸化炭素(Co2)を含む排気ガスを、マフラーから外に出す必要があります。

EVはエンジンの内燃機関の代わりにバッテリーを搭載し、バッテリーにためた電気を動力源にするため、ガソリン車のように排気ガスを出しません。ガソリン車は給油口からガソリンを入れ、燃料タンクにためますが、EVは充電スタンドの充電器か、家庭のコンセントとつないでバッテリーに電気をためます。

ハイブリッド車との違いとは

エンジンとモーターのどちらも搭載するのが、トヨタ自動車が先駆けて開発したハイブリッド車(HV)で、EVとの大きな違いは、エンジンがメインの動力になることです。外部から充電はできず、減速時に得られる回生エネルギーを使って充電します。普通のガソリン車より大幅な燃費の向上が可能で、EVのようにバッテリー残量の心配もいりません。

HVはシステムによって、パラレル方式、シリーズ方式、スプリット方式の3つに分類されます。パラレル方式は、ガソリンを多く消費する発進時や低速時に、モーターがエンジンに代わって動力になることで、燃費の向上を助けます。シリーズ方式は、エンジンを発電機として使い、発生した電気でモーターを動かして走行します。スプリット方式は、パラレル方式とシリーズ方式のどちらの機能も持ち合わせ、より効率的な制御で燃費の向上を図ります。

燃料電池自動車との違いとは

燃料電池自動車(FCV)は、EVと同じくモーターを動力に走行する車ですが、水素と酸素の化学反応によって発電する燃料電池を使います。燃料となる水素は水素ステーションで補給し、走行時には環境に無害な水蒸気のみを出すため、環境負荷の少ない車として期待されています。

EVの充電とは異なり、水素の補給はガソリンの給油と同程度の短時間で完了し、1回の補給でEVより長距離を走ることができます。普及の妨げとなっているのが、車体価格の高さと水素ステーションの設置場所の少なさです。

プラグインハイブリッド車との違いとは

HVの機能に加え、EVのように外部から充電できる機能を追加したのがプラグインハイブリッド車(PHV)です。近距離の移動はモーターで走行し、長距離の場合はモーターとエンジンを組み合わせた走行を選択する、EVとHVのいいところを合わせた走行が可能です。

バッテリー残量が無くなってもガソリンエンジンで走行できるので、EVより安心して長距離運転ができます。また、災害による停電などの際には、家電などに外部給電できる機能もあります。日本発のPHV車は、トヨタ自動車が開発した「プリウスPHV」です。

電気自動車(EV)の歴史

電気自動車の登場

世界初のEVが発明されたのは1830年代とされ、1886年に発明されたガソリンエンジン車より古い歴史を持ちます。ガソリン車より市販されるのも早く、1899年には100km/hを突破するなど、自動車の黎明期には有力な動力源として開発が進められていました。

トーマス・エジソンもEV向けの充電可能なバッテリーの開発に参加しましたが、航続距離の短さの克服は困難で、ヘンリー・フォードが開発したフォード・モデルTの成功により、自動車市場はガソリン車に支配されることになります。

技術が大きく飛躍した2000年代

ガソリン車が市場を席巻する中、各メーカーによりEVの開発は進められ、2000年代になると、課題となっていたバッテリー性能が大きな進展を見せます。

これまで使われてきた鉛蓄電池やニッケル水素電池に代わり、高エネルギーで高出力密度が期待できるリチウムイオン電池が採用されます。急速充電技術の開発やバッテリーの長寿命化が進むとともに、パワーエレクトロニクスの発達によりインバーターの性能も向上します。そして、三菱自動車工業が2009年6月に「i-MiEV」を、リチウムイオン電池搭載のEVとして、世界で初めて量産製造を開始しました。

電気自動車の研究が盛んな2010年代

2010年代にガソリン車に対する規制が強まると、各自動車メーカーはEVを含むゼロエミッション車への研究、開発を加速させます。三菱自動車工業のi-MiEVに続き、2010年12月に日産自動車がEV「リーフ」の生産を開始します。

軽自動車「三菱・i」 をベースにしたi-MiEVと違い、リーフはEV向けのオリジナルデザインを採用しました。走行可能な距離はi-MiEVの約100kmに対し、リーフは約200kmと長く、高い実用性も備えています。2017年には2代目リーフが誕生し、世界累計の販売台数が50万台を超えており、現在でもEV業界をリードしています。

電気自動車(EV)のメリット

環境への優しさ

EVはガソリン車と違い、大気汚染物質を含む排気ガスを排出しません。また、再生可能エネルギーで発電した電気をバッテリーに充電することで、ゼロエミッションを実現できるため、環境に優しい車と言えます。

さらに、エネルギー変換効率でも、ガソリン車の約30%に対し、EVは80~90%と高く、無駄なエネルギーの消費を抑えることで、環境負荷の低減に貢献できます。

低いランニングコスト

エネルギー変換効率の高さに加え、価格変動の大きいガソリンではなく、価格が安定している電気を使うため、ランニングコストを低く抑えることができます。ガソリン車とEVでそれぞれ1万kmを走った場合、ガソリン車では燃料代が約8万7000円、EVでは電気代が約3万8000円になるとの試算もあり、2倍以上の差が生じます。最近では世界情勢の不安定化によりガソリン価格は上昇しているため、その差はさらに広がる可能性もあります。

静粛性

EVは、ガソリン車のようなエンジン音や振動がほとんどないため、静かで快適な乗り心地を味わえます。一方で、エンジンの回転数を上げると大きくなる音や振動も、EVはモーター駆動のため小さく、エンジン車に慣れてきたドライバーにとって物足りなさを感じるかもしれません。

また、静粛性が高まることで、これまで気にならなかった路面状態によって変わる走行音や、エアコンなどの音が目立つ可能性もあります。周りの歩行者が、EVが近づいても気付かないこともあり、周囲に配慮した運転も必要になります。

災害時や停電時の蓄電池として使える

EVにためた電気はモーターを駆動するだけでなく、外部給電用としても使えます。近年では、災害時の非常用電源としての役目や、省エネ目的で蓄電池を設置する家庭が増えています。

EVも蓄電池として利用でき、一般的な家庭用蓄電池より大容量なため、長時間に渡って家庭で必要な電力をまかなうことができます。たとえば、「日産 リーフe+」の場合、約4日間利用が可能との試算が示されています。

補助金制度

車体価格の高さがネックとなるEVですが、補助金制度の利用や税の減免措置を受けることで、購入費や維持費を抑えることができます。EVを購入すると、国(経済産業省)が運営する次世代自動車振興センターの「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」に申請できます。申請に通ると、軽を除くEVは上限65万円、軽EVは上限45万円の補助金を受けることができます。

しかし、2022年度の補助金予算は少なくなっており、11月下旬ごろに受付を終了する見込みです。(11/21時点の一般社団法人次世代自動車振興センターHPの情報より)また、補助金を受けた場合、購入後4年間程度の決められた期間の所有が義務付けられるほか、処分する場合などは補助金の一部を返納する必要がある可能性もあります。

税金に関しても、地方自治体に収める環境性能割は非課税となり、自動車重量税と自動車税も軽減されるためお得です。各地方自治体でも、さまざまなエコカー向け補助金を用意しているので、お住いの自治体に確認しましょう。

電気自動車(EV)のデメリット

価格が高い

EVの価格は、日本のEVを代表する「リーフ」が約330万円から、同じく日産の軽EV「SAKURA」が約240万円からと、ガソリン車と比較すると割高になります。

しかし、補助金制度を利用することで購入価格を下げられ、税の減免措置やエネルギー効率の高さでなどで、ランニングコストを低く抑えることができます。今後も各メーカーが新車の投入を計画しており、EVのメリットが一般消費者に浸透すれば、ガソリン車からの切り替えが加速することが予測されます。

長い充電時間

EVの充電方法には、家庭用コンセントをつなぐ普通充電と、商業施設などの充電スタンドを利用する急速充電があります。急速充電で約30分、普通充電だと6時間以上もかかるため、数分で給油できるガソリン車と比べて長いと感じるかもしれません。

一方で、わざわざガソリンスタンに行かなくても自宅で簡単に充電できます。また、長距離の外出でも休憩のタイミングと合わせて充電するなど、工夫次第で時間の無駄を防げます。

充電場所が少ない

2020年時点では、ガソリンスタンドを含む給油所の数は全国で約3万カ所あるのに対し、公共の場所にある充電スポットの数は約1万8000カ所で、給油所の数の約6割にとどまります。

しかし、近年はEVやPHVの普及に伴い、ガソリンスタンドの数が減少する中、充電スポットの数は増加しています。EVの利便性も高まっており、その傾向は今後も続くことが見込まれます。EVで長距離のドライブをする際は、事前に急速充電できる充電スタンドの場所を確認しておくと安心でしょう。

航続距離が限定的

EVの航続距離は、バッテリーの容量と性能だけでなくモーターの性能にも左右され、車種により大きく異なります。一度の充電で走行できる航続距離が長ければ、それだけ充電回数を減らすことができるため、快適な運転につながります。

バッテリーやモーターの性能向上により、航続距離は年々長くなっており、ガソリン車と遜色ない400kmを超える距離を走れる車種も登場しています。通勤や通学、日常的な買い物に使う程度であれば、1日50km走れれば十分なので、航続距離が200km程度であれば問題なく利用できるでしょう。

止まらない電気自動車(EV)へのシフト

EVへのシフトは、地球温暖化の問題に関係しています。CO2の排出が温暖化の原因のひとつとされる中、世界的にゼロエミッションに向けた政策が進められています。EVを含めた環境に優しい車へのシフトもその流れに沿ったもので、既に逆行できない段階に入っています。

世界の動向

EVへのシフトで、急進的な動きをしているのが欧州の国々です。2022年6月、EU(欧州連合)に加盟する27カ国の環境大臣は、2035年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売を事実上禁止する規制案に合意しました。2020年のEUと英国では、新車販売台数におけるEVの割合は約5.6%でした。

中国でも国産メーカーにEVの販売を義務化しており、2020年度の新車販売台数におけるEVの割合は4.4%でした。世界全体のEVの年間販売台数700万台強のうち、半数が中国での販売数になります。

米国では、2030年度までに新車販売台数におけるEVの割合を50%にする目標を掲げていますが、2020年の新車販売におけるEVの台数は約1.8%にとどまっています。

日本の動向

日本でも、補助金や税金優遇制度などでEVの普及を後押ししています。その効果もあり、EVの保有台数は2015年の約6万2000台から、2020年には約12万3000台にまで増加しました。それでも、日本の2020年の新車の販売台数におけるEVの割合は約0.6%と、他国よりかなり低いのが現状です。

国は2030年までの目標として、新車販売におけるEVの割合を20~30%にする目標を掲げています。さらなる、官民による普及拡大の取り組みが必要とされています。

電気自動車についてよく聞かれる質問

バッテリーの寿命は?

ほとんどのEVには、モーターを動かすためにリチウムイオン電池が搭載されています。リチウムイオン電池は、充放電を繰り返すうちに蓄電できる容量が徐々に減ってしまいます。ついには航続距離が短くなり、安心して利用できなくなった時が寿命となります。

明確な寿命の基準はありませんが、「SOH(State of Health)」(電池の劣化状態を表す指標)が70%程度になると寿命の目安となります。つまり、蓄電できる容量が、新品時との比較で70%まで低下した時を寿命と判断するのが、ひとつの基準となります。新車のEVには、バッテリー保証の期間と走行距離を設けているので、検討の際には必ず確認しましょう。

急速充電にかかる時間はどのくらい?

充電スタンドには普通充電器と急速充電器があり、急速充電器は高速道路のSAやPA、幹線道路沿いの道の駅、商業施設などに備えられています。普通充電の出力は3~6kW、急速充電器は20~50kWとなっており、急速充電器の使用は1回30分間と決められています。出力50kWの急速充電器で30分間充電すると、電力量は最大で25kWhの補給が可能です。

長距離走れるの?

EVの航続距離は車種により異なります。近距離での利用を想定したEVは200km程度ですが、ガソリン車と同程度の航続距離400~500kmが可能な車種もあります。利用シーンに応じて、車種を検討しましょう。

まとめ

扱いにくそうなイメージのあるEVですが、ガソリン車にはない多くのメリットがあることが分かったと思います。日本では2021年1月の施政方針演説で、「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」という方針が示されました。電動車には、EVだけでなく、HVやPHV、HV、FCVが含まれます。

これから新車を購入する際は、環境対応車の検討は必須になります。EVには現時点で克服できていないデメリットもあるため、購入の検討をする際には、HV、FCV、PHVなどと比較し、十分にそれぞれの特性を把握しましょう。

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