磁場支援型レーザー核融合で核融合反応を3倍にまで幅増させることに成功 大阪大学ら

大阪大学は2022年11月25日、米ローレンス・リバモア国立研究所、米マサチューセッツ工科大学らの国際共同研究チームが、磁場を使ったレーザー核融合(磁場支援型レーザー核融合)によって、核融合反応を3倍にまで増大させることに成功したと発表した。

今回の研究は、上記の他に大阪大学、英インペリアル・カレッジ・ロンドン、米ロチェスター大学が参加している。核融合エネルギーは脱炭素エネルギーの1つとして注目されているが、反応を起こす際に燃料となるプラズマを十分な時間かつ高温、さらに十分な密度を維持することが技術的な課題となっていた。

それらの課題を解決する方法の1つとして研究されているのがレーザー核融合だ。レーザー核融合の最も単純な方式は、水素燃料にレーザー光を照射して燃料カプセルを爆縮させる方法だ。これにより燃焼プラズマのスポットが形成され、この「ホットスポット」が火種となり燃料全体を燃焼させることで大きなエネルギーを生み出す。

この際、カプセル表面に少しの欠陥があったり、レーザー照射のタイミングがわずかでも狂ったりすると核融合反応が減少して停止してしまうが、燃料を高い温度に加熱できれば、上記の欠陥や誤差による影響を抑え、核融合反応の減少を抑制することができる。

これまで、レーザー核融合においても、磁場が核融合燃料の温度を向上させることが明らかになっていた。今回、ローレンス・リバモア国立研究所内にある世界最大のレーザー装置である国立点火施設(National Ignition Facility:NIF)で実験を実施。磁場によって燃料温度が40%上昇し、核融合反応効率が3倍になった。これまでの実験よりもより複雑な設計で、はるかに大きなエネルギーを生み出すNIFで実験を行い、核融合点火に近いプラズマ状態でも磁気が有効に働くことを示した。

本研究において、磁場はホットスポットを周辺の冷たい燃料から断熱する働きを持ち、加熱の効率を高め、最終的には反応の収率を向上させる。磁場が存在することで、プラズマ中の電子は磁力線に沿ったらせん状の軌道しかとれなくなり、周囲の冷たい燃料への熱の流れが遅くなり、ホットスポット内に多くの熱が溜まることになる。

今回の研究成果によって、レーザー照射時の誤差の影響などを抑制することで、安定して核融合エネルギーを発生させることが可能になり、核融合エネルギーの研究を前進させることになるという。

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