微生物合成した化合物の添加でリチウムイオン2次電池の正極を安定化 JAISTと筑波大学

北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)と筑波大学は2022年11月30日、リチウムイオン2次電池のLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2正極の安定化に、微生物合成したピラジンアミン化合物(2,5-ジメチル-3,6-ビス(4-アミノベンジル)ピラジン(DMBAP))が、有効な添加剤であると発表した。リチウムイオン2次電池の開発で、作用機構が異なる他の添加剤との併用で相乗効果につながることが期待される。

リチウムイオン2次電池の開発で近年、高電圧化に有効なLiNMC系正極(LiNixMnyCozO2; x+y+z=1)の活用が検討されているが、正極材料としては比較的不安定なLiNMC系正極の安定化には、有効な添加剤を活用するなどのアプローチが重要になっている。そこで添加剤の活用として、今回は微生物合成でピラジンアミン化合物を合成。LiNMC系正極用添加剤として検討した。

この化合物は、材料の精製等がやや煩雑だったBIANODAと同様に、LiNMC系正極の安定化剤として理想的な構造を有している。この微生物合成の採用によって、比較的複雑な構造を有する添加剤を簡易かつ低コストに、また低環境負荷な手法で合成できる。

また、DMBAPの微生物合成に、Pseudomonas fluorescens SBW25の遺伝子クラスターが有用であることが見出されている。さらに、グルコースを原料に、DMBAPを発酵生産する組換え細菌も見出されている。

研究では、LiNi1/3Mn1/3Co1/302/電解液(エチレンカーボネート(EC)/ジエチレンカーボネート(DEC)/ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)) /Li型ハーフセルにおいて、電解液に2mg/mLのDMBAPを添加し、正極安定化剤としての性能を評価した。その結果、カソード型ハーフセルのサイクリックボルタモグラム(3.0〜4.5V)の第1サイクルでは、DMBAP添加系の非添加系には見られない酸化ピークが観測され、添加剤に基づいた被膜形成挙動が示唆された。

添加剤DMBAPの量を変化させつつ実施した充放電特性評価では、最善の性能が電解液への添加量が2mg/mLの系で観測。電解液(EC/DEC/LiPF6)に、DMBAP 2mg/mLを添加した系では、1Cの電流密度での100サイクル後の放電容量は83.3mAhg-1であり、DMBAP非添加系における放電容量の42.6mAhg-1を大幅に上回った。

DMBAP添加系では、リチウム挿入/脱離反応のオーバーポテンシャルの低下も観測。さらにDMBAPによる電池系の安定化効果は、フルセルでも顕著だった。

カソード型ハーフセルでの界面形成挙動の解析のための動的インピーダンス(DEIS)測定では、各電圧下でのそれぞれのインピーダンススペクトルに関する等価回路フィッティングを実施。カソード側の界面抵抗(CEI)は、DMBAP添加系はすべての測定条件下で非添加系よりも抵抗が低く、 DMBAPの界面抵抗低減効果が顕著だった。

電解液(EC/DEC/LiPF6)中で、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2正極を保管した系では、SEM(走査型電子顕微鏡)像で形態の変性が観測されるが、DMBAPを共存させた系では、形態変化が抑制され、DMBAPによる安定化効果が再び示された。

研究の結果により、リチウムイオン2次電池の開発では、作用機構が異なる他の添加剤との併用で相乗効果につながることが期待される。また、効果的に遷移金属組成の異なるさまざまなLiNMC系正極を安定化することが期待できる。国内では特許出願済みであり、今後、将来的な社会実装を企業との共同研究により目指す。

関連リンク

プレスリリース

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る