- 2023-1-18
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- Jennifer M. Granholm, NIF, エネルギー省(DOE), プラズマ, ローソン条件, ローレンスリバモア国立研究所(LLNL), 国家核安全保障局(NNSA), 学術, 核兵器備蓄性能維持計画, 核融合実験
米ローレンスリバモア国立研究所(LLNL)が2022年12月5日、史上初めて制御された核融合実験において核融合「点火状態」を達成することに成功した。LLNL は2021年8月8日に、レーザー照射による入力エネルギーの72%に相当する1.3 MJ(メガジュール)のエネルギーを発生させることに成功していたが、今回は投入エネルギー2.05MJに対して核融合エネルギー出力として3.15MJを得て、史上始めて核融合閾値100%を超えた核融合エネルギー発現を実証する科学的根拠を示した。LLNLを管轄するエネルギー省(DOE)のJennifer M. Granholm長官は2022年12月13日、ワシントンにて科学技術政策担当大統領最高顧問や国家核安全保障局(NNSA)代表、多数の上下院議員同席のもと、「歴史的快挙」とする発表を行った。
核融合は、水素などの軽い原子核同士の融合によって膨大なエネルギーを発生する原子核反応だ。これを実現する条件として、1)重水素や三重水素などのプラズマの温度を1億度以上とする、2)体積1cm3の中に原子核が100兆個以上あるような高密度プラズマを得る、3)プラズマ閉じ込め時間を1秒以上とする、などのいわゆる「ローソン条件」を満たす必要があるとされている。
LLNLでは1960年代に科学者チームにより、全方位からのレーザー照射によって重水素や三重水素などのプラズマを閉じ込め、ローソン条件に相当する高温高圧のプラズマ状態を得ようとする慣性閉じ込め方式が提案された。レーザー照射によるホットスポットから、低温プラズマ部分に連鎖的な自己発熱が引き起こされ、投入エネルギーを超える高いエネルギー出力が生成される「点火状態」を実現するものだ。LLNLでは以来60年以上にわたり、レーザー照射、燃料カプセルターゲット、空洞壁を利用した間接加熱、コンピューターシミュレーションなどの研究開発が進められてきた。
2009年に、サッカー場3面相当の大規模レーザー装置群から構成される、核融合実験点火施設「NIF」が完成した。192個のレーザービームを全方位から、約2mm径の球状カプセル内にある重水素と三重水素に照射することにより、1億度で1000億気圧の高温高圧プラズマを実現することができる。2021年8月8日には投入レーザーエネルギーの72%に相当する1.3 MJのエネルギーを発生させ、今回2022年12月5日には投入レーザーエネルギーの154%に相当する3.15 MJのエネルギーを発生させることに成功した。
DOEでは、今回の実験成果を核融合実用化に向けた歴史的発見と考え、NNSAの核兵器備蓄性能維持計画を強化するとともに、気候変動問題を解決するクリーンで経済的な新しいエネルギーを実現するものと期待している。一方で、一般社会や産業分野で活用できる核融合技術の実用化には、未だ多くの科学的および技術的な発展が必要であり、民間を含めた広汎かつ組織的、また多額の研究予算を盛り込んだ研究開発計画を始動させている。
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