酸化還元活性のある中間層の開発で、リチウム硫黄電池の実用化に進展

米アルゴンヌ国立研究所の研究チームが、リチウム硫黄(Li-S)電池に酸化還元活性のある中間層を導入し、実用化に向けて課題であったエネルギー密度とサイクル寿命を飛躍的に大きくすることに成功した。

同研究成果は2022年8月8日、「Nature Communications」誌に掲載された。

現在、携帯電話や電気自動車などのさまざまなところで、リチウムイオン電池が使われている。しかし、リチウムイオン電池には、寿命が短い、過熱しやすい、原材料の供給が難しいなどの欠点もある。代替電池として、理論的エネルギー密度がはるかに大きく、原材料の硫黄が豊富で安価である、Li-S電池が期待され、開発が進められている。

Li-S電池は、硫黄を含む正極とリチウム金属の負極が有機電解液を挟んだ構造を持ち、電極間をイオンが行き来することで充放電する。しかし、電解液に正極の反応中間体であるポリサルファイドが溶け込んで負極へ移動する、シャトル効果により、自己放電が進んで充電率が下がるとともに、電池寿命も短くなるという問題があった。

ポリサルファイドのシャトル効果を防ぐために、これまでの研究では、正極と負極の間に酸化還元に不活性な保護中間膜の配置が試みられていた。しかし、保護中間膜は、電池をさらに重くし、電池の単位重量当たりのエネルギー貯蔵量を減少させ、シャトル効果も十分には抑えきれず、Li-S電池の実用化の大きな障壁となっていた。

研究チームは、酸化還元活性のある多孔質の硫黄含有中間膜を開発し、Li-S電池へ導入した。同電池は、不活性な中間膜を用いた場合よりも約3倍も高い初期容量を示し、さらに、700回の充放電サイクルにわたって初期容量の64%を維持した。酸化還元活性型中間膜は、リチウム負極を保護するとともに、電解液に溶けたポリサルファイドを電気化学的に再活性化でき、電池容量を増大させることが分かった。

今後、研究チームは、酸化還元活性のある中間膜技術をさらに発展させ、中間膜をもっと薄く、軽くすることで、Li-S電池の性能を向上させ、実用化を進めたいと考えている。

関連情報

Development of high-energy non-aqueous lithium-sulfur batteries via redox-active interlayer strategy | Nature Communications
Lithium-sulfur batteries are one step closer to powering the future | Argonne National Laboratory

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る