MIT、神経信号を電気信号に効率的に変換する有機ポリマーを開発

Courtesy of the researchers

汗を利用して生体情報を感知するスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスは、イオンによる信号をトランジスタで使用する電気信号に変換して動作する。しかし、イオン伝導度と電子伝導度は逆の傾向を示すため、デバイスの材料は電子伝導度を犠牲にしてイオンの取り込みを最大化するように設計されていることが多い。

そこでマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、有機混合イオン電子伝導体(OMIEC)と呼ばれる材料を新たに設計し、イオンの性能と電子の性能をバランスよく発揮させることで、生体組織からの信号を効率的に電気信号に変換できる有機ポリマーを開発した。研究成果は、『Small』誌に2023年2月3日付で公開されている。

研究チームは、高伝導性顔料であるジケト・ピロロ・ピロール(DPP)を用いて、より優れたOMIECを構築するために共重合体の骨格と側鎖を検討した。その結果、特定の側鎖の密度を選択的に制御することで、イオンの移動と電子の輸送の両方を最大化することに成功した。

新たに開発したOMIECは300℃以上の加熱後も電子化学的特性を維持しているため、従来の商業的な集積回路の製造工程を利用することが可能だ。このことは、OMIECにより柔らかく、よりイオンフレンドリーな分子を加えていたことを考慮すると、嬉しい驚きだったと、MITのGumyusenge助教は述べる。

新しい設計戦略により、OMIECがイオンに基づく電荷を受け取り、保持する能力を調整できるようになった。このプロセスは、学習や記憶の際に神経細胞ではイオンを利用して伝達することに似ている。そこで研究チームは、新しいOMIECを脳の神経細胞間のシナプス結合を模倣するデバイスに利用するアイデアを思いついた。

チームが作製した人工シナプスは、学習の基礎となるシナプス可塑性に類似した方法で信号を伝達した。また、記憶形成の生物学的プロセスに類似したシナプスの信号伝達の持続的強化も可能だった。

研究チームは、将来的にこういった人工シナプスが人工神経ネットワークの基礎となり、エレクトロニクスと生物学の統合が強められるかもしれないと述べている。

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