従来比2倍の高エネルギー密度――米Amprius Technologies、シリコン負極型リチウムイオン電池を開発

米Amprius Technologiesは2023年3月23日、500Wh/kg、1300Wh/Lという高エネルギー密度を実現したリチウムイオン電池の開発を発表した。

周期律表の元素の中で、リチウムと結合する能力が最も高いのがシリコンだ。現在のリチウムイオン電池で一般的なグラファイト負極に比べ、10倍ものリチウムイオンを保持することができる。複数の自動車メーカーや電池新興企業が、走行距離が長くて軽量な次世代EV用電池開発に向け、シリコン負極に注目しているという。

Ampriusは、一般的なEV用電池の約2倍のエネルギー密度を持つシリコン負極電池を発表した。テスラなどが使用するリチウムイオン電池のエネルギー密度は250~300Wh/kgの範囲にあり、この新しい電池のエネルギー密度は、およそ2倍でこれまで最高となる500Wh/kgだ。この値は、オレゴン州ビーバートンの独立試験検証機関であるMobile Power Solutionsによって検証された。これは、同じ車重でも2倍の航続距離を確保できるということだ。

同社のターゲット市場は、まず防衛や通信分野の航空用途だ。エアバスは、通信と地球観測のための完全太陽電池式高高度プラットフォームステーション「ゼファー」で、Ampriusの電池を採用している。またBAEシステムズも、無人偵察機向けに採用している。

同社の次なるターゲットは、ドローンや都市部の空輸など、商業用の電動航空機用途だ。「エアタクシーには、重量あたりのエネルギー量が多く、しかもそのエネルギーを素早く供給できる電池が必要だ」と、AmpriusのCTO、Ionel Stefan氏は語る。この重量あたりのエネルギー量では、一般的なグラファイト負極の372mAh/gに対し、シリコン負極は理論上、3600mAh/gが可能だ。また、シリコン負極は非常に薄くて多孔質であるため、イオンの出入りが非常に速く、急速充電と高出力放電が可能だ。実際に同社は2021年12月、6分間で80%まで電池を急速充電するデモを行っている。

Ampriusは、エアタクシーに十分な容量の電池をリーズナブルなコストで製造するために、製造を強化する予定だという。2023年3月上旬、同社はコロラド州ブライトンに、5GW/hの製造能力を備えたシリコン負極ベースのリチウムイオン電池製造工場の建設を発表した。

関連リンク

The All-New Amprius 500 Wh/kg Battery Platform is Here | Amprius Technologies
Aviation, the Unlikely Road to Long-range EVs – IEEE Spectrum

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