人工の蜂の巣を使い、ミツバチのコロニーを制御する研究

© Artificial Life Lab / University of Graz / Hiveopolis

スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)とオーストリアのグラーツ大学の研究チームは、飼育シートにカモフラージュしたロボットシステムを巣箱に組み込み、セイヨウミツバチの集団行動を観察し、行動変容を促すことに成功した。研究成果は『Science Robotics』誌に2023年3月22日付で公開されている。

集団や個体間の相互作用や子育てなど、ミツバチの社会行動の多くは温度によって制御されていることが知られている。これまでミツバチと温度に関する研究は、ミツバチを観察したり外部温度を変化させたりすることに頼ってきた。しかしミツバチは寒さに弱いため、冬に巣箱を開けると温度変化がミツバチの行動に影響を与えるだけでなく、ミツバチが死に至る危険がある。またミツバチは繊細な生物としても知られており、巣箱の中に異物や嗅ぎ慣れない匂いなどがあることによって、コロニーの行動が乱れることがある。

研究チームが開発したロボットシステムは、温度センサーとアクチュエーターで構成されており、ミツバチの巣箱と一体化させることで、ミツバチの集団行動を連続してモニタリングできる。また、遠隔操作により局所的に温度変化させることで、ミツバチの行動を変化させることが可能だ。

約4000匹のセイヨウミツバチが住む巣箱にこのシステムを組み込み、冬の数カ月間観察したところ、熱プロファイルを継続的に収集することで、コロニーを観察することができた。また巣の中に局所的に暖かい場所を作ることで、コロニーを餌場に向かわせたり、コロニーの生存を脅かすような小さな集団になるのを防いだりすることができた。さらに、アクチュエーターにより熱エネルギーを分配することで、女王蜂が死んだ後のコロニーの生存を延長することにも成功した。

研究チームによると、冬の間に3分の1のミツバチのコロニーは死に至るという。ミツバチがこのロボットシステムを受け入れたことで、熱供給によりコロニーを寒さから守るだけでなく、これまで調べることのできなかった寒い時期の社会性昆虫の行動に関する重要な知見を得ることが可能だ。研究チームは現在、このロボットシステムを利用して、子育てに重要な時期である夏場のミツバチの研究を予定している。

関連情報

Robotic system offers hidden window into collective bee behavior – EPFL
Heated Honeycomb – news.uni-graz.at
Robo-Honeycomb Reveals the Secret Lives of Bees – IEEE Spectrum
A robotic honeycomb for interaction with a honeybee colony | Science Robotics

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