繰り返し充放電可能な全固体空気二次電池を開発 山梨大と早稲田大

山梨大学と早稲田大学は2023年5月19日、両大学の研究グループが水素イオン(プロトン)を可逆的に取り込みながら酸化還元反応する有機化合物とプロトン伝導性の高分子薄膜を組み合わせることで、繰り返し充放電できる「全固体空気二次電池」を開発したと発表した。研究成果は同16日、ドイツ化学会の学術雑誌「Angewandte Chemie International Edition」オンライン版で公開された。

空気電池は空気中の酸素(正極活物質)と金属(負極活物質)、イオン伝導性の電解質から構成されるが、多くの場合、液体電解質を用いているため、液体の漏れや蒸発、発火など安全性に課題がある。このため、研究グループは、負極活物質としてプロトンを取り込みながら酸化還元活性を示す有機レドックス化合物(ジヒドロキシベンゾキノンおよびその重合体)、電解質としてプロトン伝導性高分子薄膜(ナフィオン)、正極として白金触媒を含むガス拡散電極(活物質は酸素)を組み合わせた全固体空気二次電池に開発に取り組み、原理の実証に成功した。

開発した電池では、負極活物質であるジヒドロキシベンゾキノンの酸化還元反応を促進し、電解質膜との界面でのプロトン移動を円滑に進めるため、電子伝導性材料(カーボン粉末)とプロトン伝導性高分子(ナフィオン)を混合した負極構造を設計・構築した。さらにジヒドロキシベンゾキノンを高分子化したところ、負極活物質の利用率が40%以上向上し、全固体空気二次電池の容量も6倍以上向上することがわかった。この電池は繰り返して充放電でき、一定速度(放電レート15C)における発電で、30サイクルの充放電が確認された。

最近、負極活物質に酸化還元活性な有機化合物を用いた空気二次電池がいくつか開発されたが、高分子電解質膜との組み合わせによる全固体空気二次電池はこれまで存在していなかった。

繰り返し充放電が可能な二次電池は携帯機器や電気自動車などさまざまな分野で用いられ、小型軽量化、高容量化、低コスト化を目指した研究が世界的に進められている。現在主流であるリチウムイオン二次電池の性能や耐久性も向上しているが、リチウム資源は限られており、液体電解質の漏れ出しや発火の危険性などのデメリットがある。

研究グループは、今回開発した全固体空気二次電池について「水や酸素で電極が劣化することがなく、安全性にも優れている。携帯電話や小型電子デバイスなどモバイル機器用電源としての活用が期待される」とし、今後、実用化に向けて、さらなる研究を進める。

関連情報

全固体空気二次電池を開発 – 早稲田大学

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る