鉄道の架線トラブルを軽減――リアルスケールの精密な放電シミュレーション技術を開発 東京都市大学

東京都市大学は2019年11月22日、鉄道車両のパンタグラフなどが離線することに伴う「アーク放電」の現象を解明し、これらを防ぐための精密な3次元シミュレーション技術を開発したと発表した。

鉄道における離線アークは、パンタグラフの溶損による架線やパンタグラフの事故、アーク長の増加による地絡事故などを引き起こすことが知られている。アークは温度が5000℃以上で強い光を発するという特徴があり、離線アーク放電に伴う架線トラブルに見られる現象だ。現場では架線トラブルの復旧に長時間を要することから、離線アーク放電現象の解明が望まれていた。

研究者らは、これまで円筒座標系と呼ばれる2次元空間において、電磁熱流体シミュレーションを行い、対称な空間や物理現象で多くの研究成果を上げてきた。今回の研究では、より複雑な実現象のシミュレーションの設計開発を目指し、3次元化に挑戦。事故低減を図るため、リアルスケールでの離線アークの3次元電磁熱流体シミュレーション手法を開発した。

具体的には、3次元電磁熱流体シミュレーションにより、パンタグラフおよび架線における離線アークの振る舞い、ならびにアークによる材料の損傷を明らかにした。これにより、分子、原子、イオン、電子のレベルで、同放電現象を精密かつ短時間にシミュレーションできることを示した。

トロリー線やパンタグラフのすり板などで生じる、周囲からの風、電極が蒸発した時に生じる金属蒸気、電極からのジェット、電気配線からの磁界といった外乱を考慮した3次元電磁熱流体シミュレーションができることを確認した。研究室がオリジナルに開発したプログラムであることから、市販品では実現不可能なリアルスケールの精密な放電シミュレーションを短い計算時間で行い、物理現象を解明可能だ。

研究者らは、同成果を発展させることで、架線トラブルを低減でき、運転見合わせを減らすことができるほか、架線の溶損を抑えることでメンテナンスコストの低減が可能になると説明。今後は、鉄道車両や電力供給などを含めた統合的なシミュレーションへの導入を図るとともに、さまざまな研究所や企業との共同研究も進めるとしている。

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