リチウム金属電池のための自立型固体電解質薄膜の開発

Image credit: UC San Diego Laboratory for Energy Storage and Conversion / Diyi Cheng

シカゴ大学とカリフォルニア大学サンディエゴ校を中心とする研究チームが、リン酸リチウムオキシナイトライド(LiPON)と呼ばれる固体電解質薄膜の新しい製造方法を開発した。同薄膜は、実用的なエネルギー密度の大きいリチウム金属電池の開発に大きく貢献するという。

同研究成果は2023年8月3日、「Nature Nanotechnology」誌に掲載された。

リチウム金属電池は、現在実用化されているリチウムイオン電池の負極のカーボン電極に換えてリチウム金属を使用するもので、エネルギー密度が2倍以上も可能とされているものだ。しかし、充放電時のリチウム金属析出がデンドライト状で不均一になることで、電池寿命が短寿命になることや、ショート発生など安全上の問題があり、実用化されていない。

LiPONは、リチウムイオンを伝導する固体電解質薄膜であり、リチウム金属電池への応用が期待されるが、従来の固体基板上へ作製した非晶質薄膜では、分光学な内部特性評価に不向きであった。

研究チームは、柔軟で透過性の高い自立型の固体電解質薄膜(FS-LiPON)の作製法を開発した。FS-LiPONの電池機能試験を実施したところ、外圧ゼロの条件下で、集電体層とFS-LiPON層間に均一なリチウム金属層の電気化学的析出が生じることを明らかにした。さらに、挿入した金超薄膜層がリチウム析出層の核となり、銅集電体層から適当な内部圧力が加わることで、均一な密度のリチウム金属層が形成されることが分かった。

リチウム金属電池は、充放電中に圧力をかけると性能と安定性が向上し、寿命が向上することが従来から知られていたが、今回の新しい自立型固体電解質膜の開発と外圧ゼロ下での均一リチウム電極層析出メカニズムの発見は、電池寿命の長い実用的なリチウム金属固体電池の開発につながるものだ。

同研究で開発したFS-LiPONは、ウェアラブル機器やその他の小型電子機器への応用が期待でき、また、リチウム金属電池の特性理解にも役立つという。

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One Step Closer to Lithium Metal Batteries that Function with Minimal External Pressure

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