高精度な熱電デバイスの変換効率評価装置を開発―― 発電デバイスの国際標準化に道筋 NEDOと産総研

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2023年9月13日、産業技術総合研究所と共同で、高精度な熱電デバイスの変換効率評価装置を開発したと発表した。開発した装置は、熱特性にあわせて最適化されたガードリングを熱電デバイスの周囲に設置し、側面からの熱損失を最小限に抑えられる。

熱電デバイスを通して廃熱を電気エネルギーに変換する熱電発電は、大きな期待が寄せられ、熱電発電の高効率化が世界的に進められている。しかし、国際的に変換効率の評価法を統一した規格がないため、熱電デバイスの変換効率を正しく評価できないことが課題になっていた。

高精度な変換効率の評価には、入力熱流の量を正確に求める必要があるが、入力熱流を発生させるヒーターとその周辺の温度に差があると、入力熱流の測定精度に、ヒーターからの熱ふく射が影響する。ガードヒーターを用いる方法や、低温側の通過熱流を測定する手法を用いることで、ヒーターからの熱ふく射の影響を避けられるが、熱電デバイス側面から流出する損失熱流は計測されないため、変換効率を過大または過小評価するという課題があった。

そこで今回、熱電デバイス側面からの熱損失を最小化するため、熱電デバイスの周囲にガードリングを設けた装置を開発した。評価する熱電デバイスに合わせ、ガードリングの厚みを調整することで熱抵抗を最適化できる。熱電デバイスとその周辺の温度を等しくできるため、熱ふく射により流出する熱損失を最小限に抑えられる。

熱電デバイス変換効率評価装置の全体図

装置の性能は、標準的な面積と厚さ(30×30×6mm)を有する熱電デバイスへの入力熱流と通過熱流を測定して差分を計算し、デバイス側面からの熱流出量を求めて評価した。熱電デバイス直上(高温側)の温度は、産業分野の中低温の廃熱利用を想定し、550ケルビン(K)(約277℃)、600K(約327℃)、650K(約377℃)、700K(約427℃)に制御。熱電デバイス直下(低温側)の温度は、300K(約27℃)と一定に保ち、熱電デバイス両面の温度差を調整している。

測定の結果、ガードリングなしの場合、入力熱流と通過熱流の差は、温度差が大きくなるにつれ拡大した。ガードリングを熱電デバイスの周囲に設置した場合は、入力熱流と通過熱流の差がすべての温度差の領域で1W以下に低減された。これにより、熱電デバイスの変換効率を求める際に、低温側に備えた熱流計で測定された値を用いても、測定の不確かさの範囲内で問題ないことがわかった。

NEDOと産総研は今後、海外の研究機関と連携し、熱電デバイスの変換効率評価装置の比較評価をし、国際的な評価法の整合性を図る。

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