- 2023-12-5
- 技術ニュース, 機械系, 海外ニュース
- AI, Katherine Villa, Rebeca Ferrer, アンモニア, イェーテボリ大学, カタルーニャ化学研究所(ICIQ), グリーン燃料, シリコン, ラッカーゼ, 二酸化マンガン, 再生可能エネルギー, 学術, 尿素, 廃水, 自律型マイクロモーター
スペインのカタルーニャ化学研究所(ICIQ)の研究者たちは、廃水を効率的に洗浄しながら移動し、再生可能エネルギー源として利用可能なアンモニアを生成する、自律型マイクロモーターを開発した。このモーターは今後、スウェーデンのイェーテボリ大学の研究者らが開発したAI技術を使って調整され、その成果を最適化することで、超効率的な洗浄/エネルギー生成マシンとなる計画だ。
このマイクロモーターは、シリコンと二酸化マンガンでできたチューブで構成されており、その化学反応によって発生する気泡を、チューブの一方の端から放出するようになっている。この気泡が、チューブを水中で移動させるモーターとして機能する。そして研究者らは、このマイクロモーターを酸化酵素「ラッカーゼ」でコーティングした。ラッカーゼは、廃水に含まれる尿素をアンモニアへと分解する。アンモニアはその後、グリーンなエネルギー源である水素に変換することができる。
「これは興味深い発見です。現在、浄水場では尿素をすべて分解することは困難で、放流時に富栄養化を引き起こす可能性がある。これは特に都市部では深刻な問題です」とICIQのKatherine Villa博士のグループの博士課程学生、Rebeca Ferrer氏は言う。「尿素をアンモニアに変換することで、汚染物質を除去できますが、他の利点もあります。アンモニアはグリーンエネルギー源として重要性を増しており、この化合物を分解して水素を製造し、グリーン燃料として貯蔵することができるのです」。
チューブが効果的に廃水を浄化するために、科学者たちは設計を改良する必要があった。そのために水中でどのように動き、どれくらいの時間機能するかを観察する必要がある。しかし、装置から発生する気泡が視界を遮るため、観察するのは難しかった。そこで、イェーテボリ大学の研究者たちが開発した人工知能技術を応用することにより、マイクロモーターの動きを近似的に観察することが可能になった。機械学習アルゴリズムにより、液体中を泳ぎ回る複数のモーターを同時にモニターすることも可能になった。
マイクロモーターは単独で移動し、マイクロスケールで特定の活動を行うことができるため、環境修復のための有望なツールとなっている。しかし、科学者たちはこのデバイスをいつ大規模に使えるようになるかはわからないという。当面の間、彼らはこの重要な技術革新に取り組み続け、数年後には普遍的に実用化されることを期待している。