半導体製造装置エンジニアのスキル・経験の価値は高い?仕事内容や将来性を解説

パソコンやスマートフォン、家電製品、自動車など、身の回りの様々なものに半導体は使われています。半導体が私たちの快適な生活を支えていると言っても過言ではありません。その半導体製造の一翼を担っているのが、半導体製造装置エンジニアです。

半導体の製造に関しては海外勢が強く、今の日本はかつて「日の丸半導体」と呼ばれた頃の勢いはないかもしれません。しかし、半導体を製造する「半導体製造装置」は、まだまだ日本が世界の中で強い競争力を持って活躍しています。

この記事では半導体製造装置エンジニアについて、仕事内容や年収相場、将来性、会社選びのポイントなどを解説します。ぜひご覧ください。

半導体製造装置に関して

半導体とは

そもそも半導体とは、電気を通したり通さなかったりすることができる物質です。金属などの電気を通す「導体」と、ゴムなどの電気を通さない「絶縁体」の中間の性質を持つため、「半導体」と呼ばれます。シリコン(ケイ素)やゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化ガリウム、リン化インジウムなどが、半導体として代表的な物質です。

その半導体を材料として、増幅機能を持つトランジスタ、整流機能を持つダイオード、スイッチング機能を持つサイリスタなどの半導体素子が作られます。また集積回路(IC)は、半導体の表面に微細で複雑な電子回路を形成して封入したものです。これらの半導体素子や集積回路も、慣用的に「半導体」と呼ばれています。

今や半導体は、私たちの生活に欠かせません。パソコンやスマートフォンなどの精密機器はもちろん、冷蔵庫や炊飯器などの家電製品や、自動車の制御などにも使われています。近年は生成AI(人工知能)やADAS(先進運転支援システム)などの技術発展も相まって、半導体需要がますます高まっています。

そして、その半導体需要を高い技術力で支えているのが、日本の半導体製造装置メーカーです。世界シェアの約30%を占め、高い競争力を保って活躍し続けています。

半導体製造装置とは

半導体製造装置とは、その名の通り半導体を製造する装置です。しかし、半導体製造装置と一口に言っても、半導体を製造する工程によって様々な装置が存在します。

半導体の製造工程は、大きく「ウエハー製造工程」「設計工程」「前工程」「後工程」の4つに分けられます。

ウエハー製造工程には「単結晶製造装置」や「ウエハー加工装置」、設計工程には「電子ビーム描画装置」などが必要です。

前工程では「露光装置」「レジスト処理装置」「エッチング装置」「洗浄装置」「熱処理装置」「イオン注入装置」「CVD装置」「スパッタリング装置」「CMP装置」など、数多くの半導体製造装置によってウエハーに電子回路が形成されます。

後工程は「ダイシング装置」「ボンディング装置」「パッケージング装置」などにより、電子回路が形成されたウエハーを半導体チップにして封入します。

半導体製造装置エンジニアで特にニーズの高い2職種

半導体製造装置のエンジニアで特にニーズが高いのは、以下の2つです。

• 半導体製造装置メンテナンスエンジニア
• 半導体プロセスエンジニア

他に半導体製造装置の開発や設計、製造などを担うエンジニアもいます。

半導体製造装置メンテナンスエンジニア

半導体製造装置メンテナンスエンジニアは、主に半導体製造装置の保守やトラブルシューティングを行うエンジニアです。

半導体製造装置は薬液やガスを使用するため、定期的に装置内を清掃したり、消耗するパーツを交換したりしなければなりません。メンテナンスをしないと、不具合を引き起こす原因になります。

故障や破損などのトラブル対応も、半導体製造装置メンテナンスエンジニアの仕事です。トラブルで生産が止まると損失を被るため、早急に原因を解明して装置を復旧させなければなりません。

機械や電気などのハード面、シーケンスなどのソフト面の知識やスキルが必要とされます。現場の最前線に立つエンジニアとして、トラブルの再発を防止するための改善提案などもできると評価が高まります。

また、半導体製造装置の搬入や設置、検査、試運転など、装置の新規納入に携わるエンジニアも多いです。新規納入のほか、アップデートによる改造作業などもあります。

半導体プロセスエンジニア

半導体プロセスエンジニアは、半導体の製造工程を管理するエンジニアです。

開発した半導体の量産に向けて、必要とされる半導体製造装置のほか、電気、ガス、エアー、純水、薬液などの材料や、排気、排水などのユーティリティ設備を準備します。コストや品質、スケジュールを総合的に考えて生産計画を立てるのも仕事です。

実際に製造工程が稼働し始めたら、スループットや歩留まりなどの製造データを監視して分析します。正常に製造されていなければ、原因を解明して解決策を講じなければなりません。正常に製造されている場合は、生産効率や品質のさらなる向上が求められます。

気になる年収相場

半導体製造装置メンテナンスエンジニアの年収相場は、約450万円です。メンテナンスエンジニアのほか、フィールドサービスエンジニアやカスタマーエンジニア、アプリケーションエンジニアとして募集されています。

半導体業界が未経験でも、理系のバックグラウンドや整備士などのメンテナンス経験があれば優遇されます。半導体製造装置は海外に納入することも多いため、英語や中国語などの語学力があるとさらに有利です。国内外を含めて客先への出張が多いと、出張手当による年収アップも期待できます。

半導体プロセスエンジニアの年収相場は、約600万円です。プロセスエンジニアは、生産技術という名称で募集されている場合もあります。専門的な知識が求められるため、理系学部卒やプロセスエンジニア経験を必須とする求人が多いです。

半導体製造装置の性能や生産性を改善する技術的な知識やスキルとともに、製造部門に指示を出したり、顧客にプレゼンや説明をしたりするコミュニケーション能力も必要とされます。会社によっては半導体製造装置メンテナンスエンジニアと同じく、現場の問題解決や技術的なサポートのため国内外を含めた出張があります。

エンジニアを専門に転職支援を行うメイテックネクストによると、
最先端半導体の受託製造を目指すRapidusは、経験豊富な研究開発者に年収1,000万円以上の提示を行っています。またTSMCが熊本に設立するJASMも、熊本県内の製造業よりも7~8万円高い月給水準で採用を行っている状況です。

半導体業界では、生成AIや電気自動車(EV)が需要を牽引し、半導体製造メーカーの増産が相次いでいますが、そのメーカーの増産に欠かせないのが最先端の半導体製造装置です。東京エレクトロン、ディスコ、レーザーテックなどは、製造・検査装置のそれぞれの分野で圧倒的な世界シェアを有しており、大手総合電機メーカー、完成車メーカーから転職された方でも年収増となり、中には100万、150万円程度の年収アップを実現した方も少なくありません。
他にも世界で3社しか製造ができない、半導体露光装置の製造メーカーは、キヤノン、ニコンとオランダの1社。SCREENは洗浄、荏原製作所はCMP(研磨)工程で高い世界シェアを誇り、どの企業も年収アップが望めます。

半導体製造装置エンジニアの将来性

半導体の製造に関しては、TSMC(台湾)やIntel(アメリカ)、Samsung(韓国)などの海外勢が強く、日本は水をあけられています。しかし、その半導体を製造するための半導体製造装置は、まだまだ日本が世界的に競争力を持っているため、半導体製造装置エンジニアの将来性は明るいと言えるでしょう。TSMCやIntel、Samsungをはじめとする半導体メーカーも、日本の半導体製造装置を使って生産しています。

日本を代表する半導体製造装置メーカーとしては、「東京エレクトロン」「アドバンテスト」「SCREEN」「KOKUSAI ELECTRIC」「日立ハイテク」「ニコン」「キヤノン」「ディスコ」などが挙げられます。

日本の半導体製造装置が強いことに加え、半導体の需要が高まっているのも追い風となります。生成AIやADASだけでなく、IoT(モノのインターネット)やDX(デジタルトランスフォーメーション)、ICT(情報通信技術)などの技術発展も半導体の需要増を後押しするでしょう。

経済産業省の「半導体・デジタル産業戦略の現状と今後」(令和5年11月29日版)によると、2020年における半導体の市場規模は約50兆円で、2025年には約75兆円、2030年には約100兆円と右肩上がりの予測がなされています。

半導体製造装置エンジニアに関する求人の会社選びのポイント

半導体製造装置エンジニアは、全体的に人手不足で売り手市場です。特に半導体製造装置メンテナンスエンジニアは不足しており、理系のバックグラウンドがなくてもチャレンジできる会社があります。

半導体製造装置の搬入や設置、試運転、検査、メンテナンス、改造などは、社内にマニュアルがあり、OJTでも学べます。そのため、半導体製造装置メンテナンスエンジニアを募集している会社を選ぶと、完全未経験でも半導体業界に入りやすいでしょう。

半導体製造装置メンテナンスエンジニアで年収を上げたい場合は、海外出張の多い会社を選べば出張手当が加算されます。基本的に通訳がいるので語学力は必要とされません。しかし、技術的な知識やスキルとともに語学力も上げておくと、次の転職時にキャリアアップしやすくなります。

半導体プロセスエンジニアは、理系学部の専門知識やプロセスエンジニア経験を求められることが多いです。そのため、これまでのキャリアを生かしつつ、プロセスエンジニアとしての幅を広げ、さらに上流を目指せる会社を選ぶとよいでしょう。

半導体製造装置エンジニアに関する求人への転職なら「メイテックネクスト」

メイテックネクスト 東京支社長 梅津太一氏のコメント

半導体製造装置メーカーは、研究開発費の比率が高いことが特徴の一つです。次世代装置の要素開発では、学術機関や半導体メーカー各社の最先端半導体研究の成果から微細化だけでなく、新たなチップ構造をも、高品質に製造実現することが求められ、そのテーマでの研究が行われています。世の中に革新的な変化をもたらす電気製品の出現には、半導体製造装置の進化が欠かせないのです。

半導体の製造はもはや進化できないところまできた、と言われていましたが、ナノメートルからオングストロームに突入すると言われ、また、これまで前工程、後工程と表現されてきた製造工程にもチップレット化に代表される中工程が出現。まだまだ進化の途上にあるのです。その進化を実現する半導体製造・検査装置の開発では、その途絶えることのない研究テーマが十分すぎる魅力となり、やりがいの追及には非常におすすめです。

同製造装置メーカーの求人は、先端研究、装置開発、カスタマイズ設計と担う部署が異なる場合がありますが、メイテックネクストでは専門のキャリアアドバイザーが求人ごとの違いを説明し、志望すべき職種選定をアドバイスしています。また、採用のニーズは開発のみではなく、装置をお客様に導入し、その後のサポートを行うサービスエンジニアも採用が活況で、メカニックと呼ばれる自動車、飛行機などの整備士の方や、医療装置のFE(フィールドエンジニア)の方が、好待遇とエンジニアとしての成長、その双方を魅力として多く転職しています。

あまりにもかけ離れた業界とみられ、異業界からの転職を不安視される方も多いのですが、メイテックネクストでは、業界毎の相違点を専門のキャリアアドバイザーが丁寧に説明し、不安が自信に変わったとの声も多数いただいております。

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まとめ

半導体製造装置エンジニアについて、仕事内容や年収相場、将来性、会社選びのポイントなどを解説しました。

日本の半導体製造装置は、まだまだ世界的に競争力が高いです。さらに生成AIやADASなどの技術発展に伴い、半導体市場は右肩上がりの成長が見込まれます。これから半導体製造装置エンジニアの需要はますます高まるため、キャリアアップもしやすいでしょう。

半導体製造装置エンジニアの仕事に興味のある方は、ぜひメイテックネクストグループにお問い合わせください。

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記事監修
梅津 太一(メイテックネクスト 東京支社長)
中小から大手メーカーに対する採用コンサルティングを4年、その後はキャリアアドバイザーとして11年、延べ4000名以上のエンジニアのキャリアカウンセリング経験を持ちます。得意としていることは「求職者の強みの抽出」と「要素技術軸、工程軸(方法論)でのマッチング」です。昨今のマーケットは先が読みくいが故、自身が今どのような経験を積むべきか、また、どの分野(強み・弱み)に負荷をかけ成長を促すかを求職者と一緒に考えていきたいと思います。


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