- 2024-1-25
- 技術ニュース, 電気・電子系
- カーボンナノチューブ光検出器, シート型光センサ, フレキシブルセンサ, 中央大学, 大阪大学, 広帯域光, 有機トランジスタ, 極薄膜有機基材, 無線計測システム, 研究
大阪大学は2024年1月23日、同大学産業科学研究所と中央大学理工学部の研究グループが、測定対象物を傷つけない「薄くて柔らかいシート型光センサ」を開発したと発表した。光に加えて熱や分子などに関連する電磁波(光)を簡便に検知/イメージングできる無線計測システムを実現している。
硬い半導体素子や厚く頑丈な実装基板を用いて構成されてきた従来の光センサと異なり、薄型で柔軟なシート型光センサは、対象物表面に密着しながら表面や内部を撮像できる。そのため、ヘルスケアや非破壊検査への応用に向けた研究開発が増えつつある。
しかし、従来のシート型光センサに搭載されていた半導体薄膜からなる光検出器は、可視光などの短波長検出に適しているが、対象物の熱や化学分析に適した長波長の赤外検出が困難という課題があった。また、柔軟なシート型光センサの構築において、極めて高い柔軟性を発現できる有機トランジスタが候補となるが、光照射下での不安定な動作や、無線アレイシステムの構築などが課題となっていた。
研究グループは今回、長波長赤外光を含む広帯域光を検出できるシート型光センサを開発。極薄膜有機基材(5μm以下)に、カーボンナノチューブ光検出器と有機トランジスタをアレイ集積実装しており、室温/大気下でも安定性、柔軟性、高感度を示す。
光検出器として、広帯域の電磁波を吸収できるカーボンナノチューブ膜を利用することで、波長が3桁以上異なる広帯域光(可視光からテラヘルツ)を検出できる。この光検出器は、厚さ5μm以下の有機基板に印刷形成することで、厚い基板(厚さ500μm以上)上に形成された場合と比べ、出力電圧が約21倍、応答速度が15倍以上に向上している。
同様に、薄膜基板上に形成された有機トランジスタは、チャネル直上への遮光層導入により、光照射下での基本特性とスイッチング機能が安定化。いずれの素子も柔軟性を有し、曲げ半径1mm以下で1000回変形させた際も安定した特性を有した。
開発したシート型光センサは、無線計測システムで駆動するため、携帯性に優れる。また、曲げられた状態でも安定したイメージングができる。このシート型光センサは、無線計測システムとの統合により、可視~赤外光源、熱源、内部溶液の濃度などを簡易に検知/イメージングできる。
今回の研究成果は、フレキシブルセンサによる広帯域光分析を可能とすることで、生体や生体代謝物の非侵襲モニタリング、インフラ構造物の非破壊検査、配管内部の非採取検査など、様々な検査技術への貢献が期待される。