大面積酸化物ナノシートの簡便な成膜方法を開発 名古屋大とNIMS

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名古屋大学と物質・材料研究機構の共同研究チームが、酸化チタンや酸化グラフェンなどの酸化物ナノシートを基板上に隙間なく単層に稠密配列する、安価で迅速かつ簡便な成膜法を考案した。ホットプレート上の基板表面に、ピペットを用いてナノシートを含むコロイド溶液1滴を滴下し、その後溶液を吸引除去することによって直径50mmの大面積単層薄膜を作製できる。高導電性、高誘電性、磁性、光発色性、触媒特性など、様々な特徴を有する機能性デバイス開発やナノコーティングの実用化を促進するものと期待される。研究成果が、米国化学会『ACS Nano』誌に2020年10月29日にオンライン公開されている。

グラフェンや酸化チタンなどのナノシートは、高速電子伝導、高誘電性、優れた触媒特性などの多様な機能を持つことから、広範な応用開発が活発に実施されている。このようなナノシートの多くは、水溶液中に分散したコロイドとして得られるので、実際のデバイスとして実用化するには、ナノシートを様々な基板表面に秩序正しく配列させることにより成膜する必要がある。これまでは、気液界面に拡がった単分子層を固体表面に転写する方法として古くから知られる「ラングミュア・ブロジェット法(LB法)」が用いられてきたが、プロセス条件の設定が複雑であるとともに成膜に時間を要する問題があった。

研究チームは、LB法に代わる安価で迅速かつ簡便な成膜法の開発にチャレンジし、基板に水溶液を滴下した後、溶媒を加熱蒸発させることで溶質を固化析出させる方法として、有機系薄膜などで活用されている「ドロップキャスト法」に注目した。「ドロップキャスト法は、固体表面上にナノ材料を堆積させるのに、自由度が高くコスト効率の高い手法だが、溶媒が蒸発した後に溶質粒子によって特徴的な模様が残される、いわゆるコーヒーリング効果が生じるという欠点がある。我々は、加熱によって滴下コロイド溶液に対流を起こし、溶質ナノシートを基板端部に移動させることによって、コーヒーリングを生成することなくナノシートを端部から順番に配列固定できることを見出した」と、名古屋大学未来材料・システム研究所の長田実教授は語る。

純水で希釈したナノシート含有コロイド溶液に少量のエタノールを加えて表面張力と蒸発速度を制御し、その1滴を約100℃に加熱されたホットプレート上の基板表面にピペットを用いて滴下。その後溶液を吸引除去することによって、約30秒で直径50mmの大面積単層薄膜を隙間なく稠密かつ均一に作製することに成功した。

この手法により、酸化チタン、ニオブ酸カルシウム、酸化グラフェンなどを堆積させるとともに、複数回繰り返すことにより多層のナノシートを積層できることも実証した。また、導電性、半導体性、絶縁性、磁性、光発色性などの機能を発揮するデバイス作製やナノコーティングが可能であることを確認している。研究チームは、実用性の高いプロセスとして、ナノシート活用デバイスの広範な開発に貢献すると期待している。

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