協働ロボットの今後と、求められているエンジニアは? [安全安心を追求する協働ロボット] ――デンソーウェーブ 佐藤哲也氏

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株式会社デンソーウェーブ FA・ロボット事業部 技術部 部長 佐藤哲也様

~深刻さを増す産業界の人手不足、注目を集める協働ロボット~

産業界において省人化、省力化が急務となっている今、安全、安心に使えること、誰でも簡単に導入できることをコンセプトとした「協働ロボット」が、様々な業種に導入されるようになりました。

全3回の構成で「協働ロボット開発の最前線」を紹介する今回の連載ですが、これまで第1回「様々な業種で自動化を実現する協働ロボットとは?」、第2回「協働ロボットに係わる技術とその進化」について紹介してきました。最終回となる今回のテーマは「協働ロボットの今後と、求められているエンジニア」です。お話は、小型人協働ロボット「COBOTTAⓇ」を開発、販売する株式会社デンソーウェーブ FA・ロボット事業部 技術部 部長 佐藤哲也さんです。(執筆:後藤銀河、撮影:編集部)

――協働ロボットのメリットと、開発の課題はどこにありますか?

[佐藤氏]協働ロボットは、産業用ロボットと違って安全柵の中に入れる必要がなく、必要とするスペースもミニマムなので、どんな業種の工場でも元々人間が作業していたスペースに置き換えたり、作業者の隣に置いたりして使用できることがメリットです。

産業用ロボットの導入には大きなスペースが必要で、製造ラインを見直す必要もあるが、小型のCOBOTTAならそのまま設置できる

[佐藤氏]メインユーザーは自動車メーカーの工場ですが、産業用ロボットとは違う用途で導入されています。工作機械への部材の投入や取り出しなど、一人工に満たないような単純作業を省スペースで自動化できるアイテムとして生産ラインに組み込まれています。産業用ロボットは安全柵も含めて大きなスペースが必要ですが、COBOTTAなら作業者がすぐ横を通り抜けることもできますから、作業者の動線を邪魔しません。つまり生産ラインを組み替えなくても導入できるという大きなメリットがあります。

協働ロボット開発における課題点

[佐藤氏]前回、ハードウェアやソフトウェアを真似できると言いましたが、逆に課題はそこにあって、単なる従来技術の延長線上だと、競合他社との差別化ができません。

協働ロボットは、作業員をそのまま置き換える形で導入できるのがメリットですが、人を単純作業から解放することが出来ても、生産性という視点からは必ずしも人間の作業員と比較して高くなるわけではありません。いかにお客様にとってメリットを高められるか、経営者視点で協働ロボットに投資して良かったと思っていただけるかが、重要なポイントです。

――安全、安心を徹底的に追及されたのも、そのひとつの理由ですね。

[佐藤氏]はい、本質的な安全方策や安全防護、使用上の情報を利用してリスク低減を図っていくわけですが、どのようにしてお客様に安心まで訴求できるのか。機能開発はコストとのトレードオフもあり、技術屋として悩ましいところです。

AIを駆使してティーチングの自動化を目指す

――今後はやはりAIを搭載する方向で進めていくのでしょうか。

[佐藤氏]今後はAIで考えたことを忠実に実現できるロボットが増えていくと思います。弊社の場合はAIを開発するのではなく、AIをどう使うのかに特化して知恵を入れていくことになります。

例えば、AIで画像認識をすることは当然ですが、ティーチングなど動作を司るところをAIが自動的に環境を認識して自動でやれるようになるのが良いですね。人間が制御盤や手を使ってロボットを動かして教えるのではなく、人間が自分で作業をやってみて、AIがそれを見て作業を覚える。自分で試行錯誤しながら学習するということです。

上部には画像認識用のカメラを搭載している。今後はAIによる制御へと進化していくという

[佐藤氏]人間のコーチングでも「やってみせ、言って聞かせて、させてみて」というのがありますが、AIを使うことで、同様のことをロボットでもできたらと思っています。ステップ分けをして、まず来年度に単純な作業から、徐々に技術を入れた複雑なものを発売していきたいですね。

――来年度だともう準備に入られているわけですね。どのようなユーザーを想定されていますか?

[佐藤氏]まだ量産試作の手前の段階で、ゴリゴリやっているところです(笑)。B2B、プロユースが中心になりますが、新規ユーザー開拓も視野に入れて進めるつもりです。

産業界では、企業の人手不足、生産年齢人口の減少が課題となっており、生産性向上が叫ばれています。そこに新型コロナウイルスが現れ、人々の生活を一変させてしまった。これからは、何を考えるにも「ウィズコロナ」「非接触」を念頭に置いた製造体制が必要になります。

ウィズコロナでロボットが人々の生活に入り込む

[佐藤氏]COBOTTAの導入先も、現状は部品製造や食品業界などが増えていますが、実験をするラボなどからも期待されています。今後は、ロボットが得意とする繰り返し単純作業に留まらず、AI化されることで、より高度な判断や作業も可能になっていくと思います。協働ロボットは、今後そうした要求にも応えらえるロボットへと進化していくでしょう。

人との非接触という点では、ロボットは大きなメリットがあります。ウィズコロナで、消費も店頭販売からネット通販へと大きくシフトし、それに伴って物流活動が非常に盛んになっています。今後は物流プロセスの自動化にも導入されていくでしょうし、さらに進んでラストワンマイルなど、人々の生活にますます入り込んでいくのではないでしょうか。

ロボット全体が把握できること

――最後に、産業用ロボットや協働ロボットを開発するエンジニアとして、どのような素養を持っている人材が必要とされているのか、お聞かせ頂けますか?

[佐藤氏]ロボット開発は、ある特定の分野だけが分かっていれば出来るという時代ではなくなってきています。以前はハードウェアかソフトウェアのどちからが分かっていれば良かったのですが、今はCOBOTTAの様にハードウェアの中に制御回路もソフトウェアも全部入っています。つまり、「ハード」「ソフト」「制御」という3つの分野が分からないと成り立たちません。

エンジニアとして、電気だけ、機械だけ、といった狭い専門ではなく、色々な分野に興味を持ってできる好奇心のある方が、ロボットエンジニアとして成功すると思います。

弊社では、ロボットを担当するエンジニアには、解析からシミュレーション、設計から実際に油まみれになって自分の手を使って組み立てるところまで、全て体験し、身につけてもらいます。モチベーションとして、自分の専門以外は自分の仕事ではないという人、言われたことをやればいいという人は向いていないですね。

この分野しかやっていませんという人より、逆に大学では生物学だとか法学部だとか専攻していたような人でも興味があれば、先入観がないのでどんどん食らいついてくる。つまり、エンジニアとして最初から知識がなくても良いが、必要とされる全ての技術を探求できる人が、ロボットエンジニアには必要だと思います。

エンジニアは人間性を磨くことも大切

[佐藤氏]もの作りは、作り手であるエンジニアの人間性が問われています。協働ロボットで言えば、ISOの安全規格には、安全のために何をどこまでやりなさいと定義されているわけではありません。リスクをゼロにすることはできないので、どこまでリスクを最小化するのか、どんな技術を使うのかは、作り手であるエンジニアに委ねられています。それゆえ手抜きをしようと思えばできますが、それが良いか悪いかは実際使っていただけるお客様には、ちゃんと伝わります。

私がプロジェクトマネージャーとして担当してきたCOBOTTAの開発でも、バカ正直なだけじゃビジネスが成り立たないとか、時には妥協も必要と言われたり、「エンジニアの美学」を捨てろと言われたり(笑)

――「エンジニアの美学」ですか?

[佐藤氏]「エンジニアの良心」かもしれませんし、その延長線上に「企業としてのポリシー」があるのかもしれません。COBOTTAの開発では、とことんこだわったことで、パートナーメーカーさんにもいろいろ苦労も掛けました。ですが、リリース直前まで愚直にコンセプトを追求し、努力を積み重ねてきたことで、安全、安心を誇れる、エンジニアとして胸を張れるロボットを作り上げることができたと思っています。


佐藤哲也(株式会社デンソーウェーブ FA・ロボット事業部 技術部 部長)
1992年日本電装に入社し、工機部ロボット技術課にて入社以来一貫してロボットの技術開発に従事。2001年に株式会社デンソーウェーブに出向し、2017年小型人協働ロボット「COBOTTA」を開発。2019年1月より現職。

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株式会社デンソーウェーブ


ライタープロフィール
後藤 銀河
アメショーの銀河(♂)をこよなく愛すライター兼編集者。エンジニアのバックグラウンドを生かし、国内外のニュース記事を中心に誰が読んでもわかりやすい文章を書けるよう、日々奮闘中。


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