メタマテリアル熱電発電で密閉空間内の物体を冷却する非放射冷却を実現 東京農工大学と理化学研究所

東京農工大学は2024年2月26日、同大学と理化学研究所の共同研究チームが、熱エネルギーを電気に変えるメタマテリアル熱電発電で密閉空間内の物体を冷却する、非放射冷却を実現したと発表した。

冷却技術は、電子機器の安定した駆動や耐性の維持における重要な技術だ。特に大規模集積電子デバイスにおいては、以前より水冷や空冷技術などが冷却技術として用いられているものの、より効率的な冷却方法が求められていた。

同研究グループは今回、熱エネルギーを集めるメタマテリアルと熱電変換を組み合わせたメタマテリアル熱電変換により、非放射冷却機構を構築した。

吸収体で囲んだ密閉容器を用意し、50度の熱輻射を吸収できるメタマテリアルを備えたメタマテリアル熱電変換素子を中に設置。容器内部の温度推移を測定した。

(A) メタマテリアルを形成した電極を備えたメタマテリアル熱電変換素子の概略図
(B) 実験で用いた、吸収体で囲んだ密閉容器の概略図
(C) 実験で用いたメタマテリアルの電子顕微鏡図
(D) 今回用いたメタマテリアルの吸収スペクトル(赤線)と、メタマテリアルが吸収した50度の熱輻射スペクトル(青線)との比較

結果として、メタマテリアルを備えていない比較熱電変換素子を含んだ容器と比較して、メタマテリアル熱電変換素子を含む容器の温度低下が大きいことを確認した。

冒頭の画像は、メタマテリアル電極を備えた熱電変換素子を含んだメタマテリアル容器と、比較電極を装着した熱電変換素子を含んだ比較容器との温度推移を比較したものだ。メタマテリアルを用いることで温度低下や出力電圧がより大きくなっていることが見て取れる。

メタマテリアルの熱輻射吸収に加えて、熱電変換が熱輻射エネルギーを容器外に排出したことで、メタマテリアル熱電変換素子を含んだ容器内の温度がより早く低下したものとみられる。

今回用いたメタマテリアルアレイの体積は、密閉容器の体積と比べて1万分の1程度となっている。メタマテリアルの数を増やすことで、より多くの熱輻射エネルギーの吸収が可能となり、さらなる冷却効果につながるものとみられる。

今回の研究結果は、大規模集積電子デバイスのパッケージ内部のような密閉空間内を冷却する技術として活用できる。既存の水冷、空冷技術と併せて用いることで、より高効率での冷却につながることが期待される。

また、密閉空間内の熱を利用して発電できるため、環境発電と環境冷却を同時に行える技術としての応用が期待される。

関連情報

〔2024年2月26日リリース〕密閉空間内の冷却をメタマテリアルによって実現 ~高集積電子デバイスの冷却技術への展開に期待~ | 2023年度 プレスリリース一覧 | プレスリリース | 広報・社会連携 | 大学案内 | 国立大学法人 東京農工大学

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