古典的な2つの核融合プロセスを統合してプラズマを安定化

Image credit: Qiming Hu / PPPL

アメリカのエネルギー省プリンストンプラズマ物理研究所(PPPL)は4月16日、同研究所の研究チームが、核融合の閉じ込められたプラズマから、熱や粒子が漏出するのを効率的に防ぐ新しい手法を考案したと発表した。

従来から提案されていた追加磁場を生成する「共鳴磁気摂動(RMP)」に加えて、プラズマ電流を維持する技術として知られていた「電子サイクロトロン電流駆動(electron cyclotron current drive:ECCD)」を組み合わせるものであり、プラズマ制御のフレキシビリティを増進できることをシミュレーションにより明らかにした。核融合エネルギー生成コストを下げるなど、将来的な実用炉設計に新しい道を開くと期待している。研究成果が、2024年3月13日に『Nuclear Fusion』誌に公開されている。

軽元素の原子核を衝突させて大きなエネルギーを発生させる核融合は、資源が海水中に豊富に存在し、かつ二酸化炭素(CO2)を排出しないことから、エネルギー環境問題を根本的に解決すると期待されている。核融合では、水素同位体イオンから構成されるプラズマが極めて高温に加熱され、プラズマ中の原子核が互いに衝突して融合することによりエネルギーを発生させる。

だが、磁場によってドーナツ状に閉じ込められるプラズマから、熱/粒子が漏出する「エッジローカライズドモード(ELM)」現象が避けられず、実用炉設計に向けて大きな障害の1つになっている。ELMが顕著に発生すると核融合反応が停止してしまい、更にはトカマク設備を損傷する危険性がある。これを回避する手法が探索されてきたが、「最も優れた方法は、RMPを適用して追加磁場を生成することだ」と研究チームは語る。RMPはプラズマ内をジグザグと通り、プラズマ中に「磁気島(magnetic islands)」と呼ばれる円形または楕円状の追加磁場を形成するが、磁気島を適正な大きさと形状に制御するのが難しいという課題がある。

研究チームは、RMPによって生成される磁気島を、プラズマ電流を維持する技術として知られていたECCDによって制御することを考え、シミュレーション研究を実施した。本質的にはマイクロ波ビーム入射であるECCDは、プラズマ中心部に適用されるのが通常だが、プラズマ端部に付加することによってRMPを発生させる必要電流量を低減できるとともに、プラズマ端部を安定化する磁気島の大きさや形状を最適に制御できることを見出した。例えて言えば、RMPは島を点灯するシンプルな光スイッチのように機能し、一方ECCDはプラズマを制御するために磁気島を理想的な大きさや形状に調節するディマースイッチのように機能する。

更に、ECCDがプラズマ中の電流と同方向に付加される場合、磁気島の大きさは減少してELMが復活してしまい、反対方向に付加されると磁気島の大きさが増大してELMが抑制されるなど、PPPLのトカマク型実験炉DIII-Dにおいてこれまで実験的に確認されてきた結果と整合することを確認した。研究チームは、「プラズマ制御のフレキシビリティを高め、RMP発生に必要な電流量を下げることによって核融合エネルギー生成コストを下げるなど、将来的な実用炉の設計に新しい道を開いた」と期待している。

関連情報

Creating an island paradise in a fusion reactor | Princeton Plasma Physics Laboratory

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