サステナブルな水素燃料製造を促進――磁力で触媒反応効率を高める研究

Credit: Priscila Vensaus/EPFL

電極触媒は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換したり、その逆に電気エネルギーを化学エネルギーに変換したりするために重要であり、さまざまなグリーンエネルギー技術に活用されている。燃料電池や電解層などにおいて、水素や酸素の電気への変換や、水の水素と酸素への分解を促進することで、クリーンエネルギーの循環を促進することが可能だ。

しかし電極触媒には、効率という課題がある。従来の電極触媒を利用した多くの技術では、エネルギー変換の重要なステップである、触媒表面への反応物の輸送を最大化できていない。そのために、反応全体の効率が低下してしまうのだ。

スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究チームは、磁場を利用することで、電極触媒反応における反応物の移動を促進し、エネルギー関連反応の効率を向上できることを明らかにした。研究成果は、『Nature Communications』に2024年4月3日付で公開されている。

今回の研究で、触媒が磁場に囲まれると磁場が移動する電荷に及ぼす力であるローレンツ力が発生することが明らかとなった。ローレンツ力により、触媒表面での反応物と生成物の移動が促進され、反応が迅速になるだけでなく、触媒表面における反応物の不足という問題も克服できる。反応物の不足は、燃料電池に不可欠な酸素還元反応(ORR)などの反応に共通する課題だ。

電磁石を応用し、非磁性電極に磁場を印加して反応を観察することで、さまざまな効果を切り離して磁力が触媒周辺の反応物をどのように動かし、促進するかを観察することができた。磁場により小さな渦巻の動きができることで、グリーン水素製造の反応効率が大幅に向上することがわかり、持続可能なエネルギー技術の進歩への貢献が期待できる。

研究チームは、非磁性界面上の磁場によって誘導される酸素還元反応の活性が50%以上向上することを実証した。この結果は大幅な効率向上を示すものであるが、この研究の最重要事項は、水素や酸素のような気体の生成物や反応物を含むさまざまな電極触媒反応を磁場が促進するために必要なメカニズムや条件を実証し、この分野における基本的な論争の多くを解決できたことだという。

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