- 2024-6-17
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米カーネギーメロン大学は、AIを活用して非侵襲型ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)の性能を飛躍的に向上させることに成功したと発表した。AI技術を使用して人間の意図解読を改善し、動き続けている仮想オブジェクトの追跡を、人間が考えるだけで制御できることを実証した。この研究は、2024年4月30日付で『PNAS Nexus』に掲載された。
BCIとは、脳の神経細胞が発する電気信号を読み取ることで、コンピューターやロボットを人間が考えるだけで操作できるようにする技術だ。米Neuralinkや米Synchronが開発している侵襲型BCIは、手術が必要であり、利用者の負担が大きいといった問題があった。
それに対し非侵襲型BCIは、安全性や費用対効果の向上に加え、一般人でも使用できることなど多くの利点をもたらす。健常者および運動機能障害がある患者の生活の質を向上させる可能性も秘めている。しかし、非侵襲型BCIは記録の精度が低く、解釈が難しいという課題に直面している。
同大学のBin He教授が率いる研究室では、2019年に非侵襲型BCIを使用して、思考で制御されたロボットアームが、コンピューターのカーソルを絶えず追跡し、追従する能力を持つことを初めて実証した。また、技術の進歩に伴い、AIを使ったディープラーニング手法もより強力で効果的なものになっている。
今回の研究では、まず28人の被験者グループに、2次元空間内のオブジェクトについて考えるだけで追跡するという複雑なBCIタスクを与えた。タスク実施中は、脳波記録法(EEG)により、脳から生じる電気活動を頭皮上に置いた電極から直接測定して記録した。
研究チームは、ディープニューラルネットワークの訓練にAIを使用。BCIセンサーのデータを使って、オブジェクトの連続移動に対する人間の意図を直接解読して解釈した。その結果、このディープラーニングをベースとした解読モデルは、利用可能な訓練データが増加するにつれて性能が向上し、最終的には従来のBCI解読モデルの性能を大幅に上回ることが分かった。
研究チームは、ロボットアームの高度なタスクを制御するために、AIを活用したこの非侵襲型BCI技術をテストしているところだ。さらに、健常者だけでなく、運動障害の後遺症を抱える脳卒中患者に対しても適用できるかどうかを検証している。
この研究により、数年後には、AIを搭載した支援ロボットが幅広い層の潜在ユーザーへ提供可能になるかもしれないという。また、脊髄損傷や脳卒中などが原因で運動機能障害を抱えているが脳インプラントの埋め込みはしたくない患者は、このような研究から非常に大きな恩恵を受けることになるだろうとしている。