生成AIを使って新たな系の状態図を作成する手法を開発 MITとバーゼル大学

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マサチューセッツ工科大学(MIT)とスイスのバーゼル大学の共同研究チームが、生成AIを使って新規物質の状態図を極めて効率的に作成できる手法を開発した。物理法則を知識ベースとして活用する手法(physics-informed technique)を用い、測定統計の条件付き確率分布を得て、生成分類法によって学習することで状態図を作成するものだ。膨大な理論知識や実験研究なしに、更に従来のマシンラーニングのように広汎なトレーニングを必要とせずに、新規や複雑な多元系物質における状態図を自動的かつ効率的に描くことができるようになると期待している。研究成果が、2024年5月16日に『Physical Review』誌に公開されている。

水が凍る場合、液相から固相に転移し、密度や体積などの特性に劇的な変化が生じる。水の相転移は多くの人にとって当たり前のことであるが、新規の材料や複雑な多元系物質の相転移、例えば常伝導体から超伝導体への相変化などは重要な研究分野だ。このような系を完全に理解するには、構成相を認識してさまざまな外部条件に対応した状態図が必要になる。これまで、未知や新規な系における状態図を決定するには、膨大な理論知識や実験研究が必要とされていた。

トレーニングデータの規則性や構造を学習することで、テキストや画像、他のメディアを創出する生成AIが急速に発展し、これまで無縁と思われていた自然科学分野においても、生成AIの活用が検討され始めている。状態図の作成を分類タスクの1つとして捉え、物質から測定される秩序変数の統計確率分布を、識別分類法で学習することによって状態図を作成する研究も行われている。

MITおよびバーゼル大学の研究チームは、物理法則を知識ベースとして活用する手法を用い、測定データ統計の条件付き確率分布を得て、それにより生成分類器を構築するための生成モデルを定義した。そして識別分類法のようにサンプルから学習するのではなく、生成モデルを標準的な統計式に挿入して直接的に生成分類器を構築した。

この生成分類器は、温度や圧力などのパラメータを与えると、その系がどの段階にあるかを判断できる。他のマシンラーニング技術と比較して、広汎なトレーニングを必要とせずに、温度や圧力などの変数に対応して系がどの相にあるかを特定でき、状態図の作成に対する計算効率を著しく向上できることを見出した。

研究チームは、「この手法によって、新規な材料や未知の物質、複雑な多元系の物質の熱力学的特性を調査し、量子系のもつれを検知することができる。究極的には、物質の未知相を自律的に発見することが可能になるだろう」と説明する。

関連情報

Scientists use generative AI to answer complex questions in physics | MIT News | Massachusetts Institute of Technology

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