わずか2層の炭素原子から成る極薄リチウムイオン電池アノードのエネルギー貯蔵メカニズムを解明

英マンチェスター大学は2024年9月6日、同大学の研究チームがわずか2層の炭素原子で構成されたリチウムイオン電池アノードにおけるリチウムイオンの挙動を観察し、そのエネルギー貯蔵メカニズムを明らかにしたと発表した。この発見はエネルギー貯蔵技術の新たな進展をもたらす可能性がある。

リチウムイオン電池は、スマートフォンやノートパソコン、電気自動車など多くの機器に電力を供給するために使用されている。電池は、原子層材料へイオンが入り込む「インターカレーション」というプロセスを通じてエネルギーを貯蔵する。従来から電池のアノードの材料にはグラファイトが使用されている。グラファイトは炭素原子から成る単原子層物質のグラフェンを複数積層したもので、電池を充電すると層間にリチウムイオンが滑り込む。

より多くのリチウムイオンをアノードに取り込み、後で取り出すことができれば、バッテリーはより多くのエネルギーを蓄積し放出できることになる。このインターカレーションのプロセスはよく知られているが、微視的レベルの詳細は十分に解明されていなかった。

研究チームは、炭素の原子層が2層だけというバイレイヤーグラフェンに着目した。バイレイヤーグラフェンは、電池のアノード材料としては可能な限り薄いものだ。一般的なグラファイトのアノードをバイレイヤーグラフェンに置き換え、インターカレーションのプロセスにおけるリチウムイオンの挙動を観察した。その結果、リチウムイオンは2つの層の間に一度に全てが入り込むわけではないことと、ランダムに滑り込むわけではないことが分かった。

実際には、このプロセスは4つのインターカレーション段階に明確に分かれて展開していき、リチウムイオンは各段階で整然と並ぶ。そして、それぞれの段階でリチウムイオンの六角形格子が次第に密になっていく。研究チームは、偶然発見されたこれらの段階を「面内段階(in-plane staging)」と名付けた。この発見により、リチウムイオンの格子とグラフェンの結晶格子との間には、これまで考えられていたよりもはるかに大きなレベルの協力関係があることが明らかになった。

一方で、バイレイヤーグラフェンのリチウム貯蔵容量は、従来のグラファイトに比べて低いことも判明した。バイレイヤーグラフェンでは、正電荷を帯びたリチウムイオン間で相互に作用するスクリーニング効果がグラファイトより低いため、イオン同士の反発作用が強くイオンが離れたままになる。

インターカレーションのプロセスを原子レベルで理解することで、リチウムイオン電池の最適化やエネルギー貯蔵を強化する新材料の探索にも新たな道が開かれるという。また、この研究成果は、将来的に原子レベルで薄い金属を使用することでスクリーニング効果を高め、貯蔵容量を向上させることができる可能性を示唆するものでもある。

研究成果は、2024年8月13日付で『Nature Communications』に掲載されている。

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